独リ書ク恋慕

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「ひとりかくれんぼって聞いたことある? こっくりさんとかソッチ系のやつなんだけど…」 「知らん」  景時は一生懸命、事のいきさつを説明した。俗世間のことはSNSすら知らない兄に、匿名大型掲示板に書き込まれた『ひとりかくれんぼ』という降霊術がユーチューバーを通じて一般の人々の間で軽いブームになっていることを説明するのは非常に骨が折れる。 「…てなわけで部活動の一環として俺が今度『ひとりかくれんぼ』やることになったんだけど」 「どういう部活だそれは。それで俺に何の頼みが…」  ヘラっと笑いながら景時は片腕を自分の後頭部に回して軽い口調で言い放った。 「もし俺が失敗したら、兄貴祓って」  乾いた空気が一瞬流れ、その次の瞬間、空間を切り裂く様な怒鳴り声が家中に響き渡った。 「~~~~~~…ッ!!! 帰れッ! 今すぐ荷物を纏めて山を降りろッ!!」  帰りのバスの時間を待つ間、景時が用事を済ませている間に和人がつれてきた霊たちを景隆が祓ってやる。一応、遠路はるばる弟に付き合わされてここまで来たのだからサービスだということらしいが、先程の会話の後だと若干の気まずさがある。黙々と除霊し続ける景隆に、隣から折鶴が訊いた。
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