独リ書ク恋慕

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「いいのか? 俺はこっくりさんもひとりかくれんぼも聞いたことがないが、降霊術は失敗すると面倒だぞ?」 「構わん。こっくりさんってのは要は子供の遊びだ。まともな降霊術じゃねぇ。そんなもんに応じて寄せられてくる低級霊なんぞ、景時なら余裕で祓える」  さっきの景時の説明だとひとりかくれんぼとやらはこっくりさんよりも危険だと言われているらしいが、それでも遊び仕立ての儀式で呼び出せる霊なんてたかが知れている。 「…あのさ」 「?」  祓ってやっている最中の和人に話しかけられて二人が軽く驚く。 「治らねぇの? その…俺の、憑依体質って」 「お前、折鶴は見えるんだったな?」 「え? …まぁ、一応」  彼の名前は本当に折鶴でいいらしい。景隆が続けた。 「ならそれなりに霊力(ベース)はある。治るか治らねぇかでいけばその体質は一生治らねぇが、鍛えりゃ憑いてきた霊を自力でコントロールできるようにはなるから、そうすりゃ良い霊媒になれる」  …なりたいかどうかは別として。 「霊媒?」 「それこそ降霊術なんかでよく使われる依り代と呼ばれるものだ」  説明している景隆の隣で折鶴が笑う。 「男の依り代とは珍しい。今から修行するには少々歳を食い過ぎているが」 「……俺…まだなるって言ってないンですけど」  …やはり和人は付き合う相手を間違えたのかもしれない。 「そうか? うちは祈願代行なんかもやってるから、依り代になってくれるなら大歓迎なんだが」 「なんスかそれ」  心底嫌そうな顔をしている和人に景隆は軽く笑った。 「身代わり人形って聞いたことあるだろ? 本人の幸せのために厄災を引き受ける。それが依り代の仕事だ」 「……絶対にやりません」
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