独リ書ク恋慕

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 嫌な予感が、しないわけではなかった。しかし和人でさえ感じ取れるこの嫌な感じを景時が感じ取っていないはずもなく、そして彼はその強い『嫌な予感』の正体を確かめるためにひとりかくれんぼを決行しようとしている。  ひとりかくれんぼの手順その二。人形の中に自分の髪、もしくは爪など身体の一部を入れる。  用意しておいた自分の爪と髪を半分ほど入れて景時は少し考えた後、残り半分をなぜかいつも部屋に常備している自作の札に丁寧に包んで和人に渡した。 「一応持っといて」 「なんで?」 「お守り」  可愛らしく笑って茶化した声で言ってくる景時に和人が思いっきり顔を顰める。 「気持ち悪ッ」  それでも一応服のポケットに押し込んでくれた和人を笑い飛ばして景時は百均のソーイングセットを取り出した。  ひとりかくれんぼの手順その三。裂いた人形の切り口を赤い糸で縫う。この時、糸の残りを人形にぐるぐると巻き付けるとなおよい。 ◇ 「…準備はここまでのようだ。人形に名を付け、丑三つ時まで待つ。聞いているのか? 景隆」  パソコンの画面を眺めながら読み上げてくれている折鶴に少し離れたところから景隆が何か考え込むような顔で聞いていた。
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