独リ書ク恋慕

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 まったく。何故人間であるこの男より式神であるはずの自分の方がパソコンの操作が得意になってしまったのか。パソコンの操作まで式を使うのだから面倒くさがりもここまでくると天晴である。  景隆の返事を待たずに画面を見ながら折鶴は続けた。 「人形に名前を付ける。丑三つ時になったら風呂場へ行き、風呂桶に水をため…」  人形に向かって人形の名前を呼び「〇〇が鬼」と三回言う。  人形を風呂に沈める。  家の照明をすべて落とし、テレビをつける。  刃物を持ち、風呂場へ行って人形を刺す。  家の中のどこかに隠れる。  この時、隠れる場所にはあらかじめコップに入れた塩水を用意しておく。  隠れ続ける。  終了時はコップの塩水を口に含み、人形のところまで行き人形に塩水をかけて「私の勝ち」と三回唱える。  そこまで読み上げてから、折鶴が乾いた声で呟いた。 「……………景隆、これは本当に降霊術か?」  ネットのページには人形に霊が下りてくるなどと書かれているが、依り代に名を与えた上にいたずらに傷つけて弄ぶようなこんな手順で霊が下りてくるとはとても思えない。何かが…おかしい。  第一、何故術者が依り代の側を離れて隠れなければならないのか。意味がわからない。
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