独リ書ク恋慕

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『…つーことは…俺が視たあの動画の霊は?』 「事故物件だったんだろ? 普段はおとなしくしていた霊が、住民が面白そうなことやってたんで思わず悪ノリしてからかいに来たんだろ」 『まじかよ…! いや素人が降霊術やりますつって動画出してホントに映ってたら勘違いしても仕方なくね?!』 「しかたないわけあるかッ!! とにかくいますぐ中止だ…ッ」  隆景の握る古い受話器の向こうから、弱弱しい声が返ってきた。 『悪ぃ…兄貴。もう人形…作っちゃった』 ◇ 「何それ、なんで気づかないの?!」  景隆と同じことを言っている和人に謝りながら家に戻る。 「あーーーーーマジでごめん。ぜんっっぜん気が付かなかったッ」  動揺で声が裏返っている景時に和人が訊いた。 「なんとかできンの?」  数秒ほど止まった後、景時が珍しい程深刻な顔で息をついた。 「…ヤナッシー人形さえあれば多分、これ以上悪化しないようにすることくらいはできる…と思う」  慌ててアパートに戻って机の上を見てみると、置いておいたはずのヤナッシーは忽然と姿を消していた。 「嘘だろ…?」  思わず和人の口から乾いた声が漏れる。人形が勝手にいなくなるなんてことがあるわけがない。机の下や付近を捜したが、転がっている様子もなく。
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