独リ書ク恋慕

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「あー…なんかホラー映画とかで良く聞くよな。俺らからすりゃ死んだ奴の呪いより生きてる奴がかけた呪いのがよっぽど怖いけどな」 「生きてる奴? お前って幽霊専門じゃねぇの?」  人が幽霊を怖がるのは得体が知れないからであって、生きている人間の怖さとは意味が違う。どちらの方がより恐ろしいかを比べるものでもないのだ。 「別に専門とかねぇよ。大体、人の念なんて生きてようが死んでようが似たようなもんだしな」 「…俺の頭でもわかるように説明してくれる?」  半眼になって言い返されて、景時は昔自分が景隆から訊いた話をそのまますることにした。 「例えば……、花を二つ育てるとするだろ? この時、片方には毎日水をやりながらひたすら『すくすく育ってくれてありがとう』と感謝の念を込めて育てる。もう片方には『いらねーわこいつ、死ねよマジ』って早く枯れるように祈りながら水をやる。言っとくけど水をやる量とかその他の条件はおんなじな。ただ、気持ちを込めて言葉をかけるってだけ」 「…シュールだな」  植物に耳や心がなくて本当に良かったと思える実験だ。と、その時の和人は思った。  しかし景時は真顔で言ったのだ。 「マジで即効枯れるんだぜ? 『死ねよ』って言い聞かせながら育てた花って」 「…え?」 「これ、実際にやった奴がいるマジの実験。感謝しながら育てた方は普通に水やるよりも、ずっと綺麗な花が咲く。これが『呪い』っつーか、『人の念』ってやつだよ。良い方向にも悪い方向にも働く」
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