独リ書ク恋慕

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「……。自分の髪と爪」 「流石に血を入れるほど馬鹿ではなかったか。…しかし、少量とはいえあいつの髪や爪が入っているとなると…」  …折鶴では分が悪いかもしれない。  低い声で付け足した景隆に、和人はあらかじめ決めてきたかのような声で続けた。 「アンタならあれより強い人形、作れるよな?」 「呪いの人形をか?」  景隆は嗤うように息をついた。毒を以て毒を制す…か。 「……前に景時が言ってたんだ」 「ん?」 「呪いってのは、人の念だって。良くも悪くも、相手に対して強い影響を与える。…時には殺すことも」 「…………」  いつもの和人からは考えられないほど長く、そしてはっきりと話していた。 「でも生かすこともある。つまり呪いってのは…ホントは…」  誰かを想う人の強い感情であり、それ自体に善も悪もないのではないか。  それが、和人の考えた答えだった。 ◇ 「あーーーーくっそ見つかんねぇッ!」  あれから襲い来るヤナッシーの嫌がらせを躱しながら必死にヤナッシー人形を探す事数時間。  依然としてヤナッシーが見つかる気配はない。
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