独リ書ク恋慕

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「そっか。…じゃ、実は初めましてだったんだな」 「ま、昔の記憶はあるがな。…とにかくそんな顔をするな。後でまたすぐに会える」 「……お前じゃなくて、お前の記憶を持った別の『折鶴』だろ?」  目の前の彼はまだ半年しか生きられていなくて、自分の馬鹿が原因でこの世から消えようとしている。 「…そうだな。ならせめて、覚えていろ。今日の出来事を」 ◇  ひとりかくれんぼ。  あの書き込みをした者の目的は一体何だったのだろう。  単なるいたずらか、世界への呪いか。  だが呪術には呪い返しがつきものだ。  人を呪わば穴二つ。呪術を使ったものにも当然代償はある。  しかし今回の場合は自身で自身を呪うため、呪い返しもやった本人が受ける。  この呪術の方法を遊びとしてネットに書き込んだ者の真意はわからない。  だが結果としてこの書き込みは大勢の人間を呪うことに成功した。  書き込みをした張本人は何のリスクも負うことなく。  世界の悪意が、聞こえるようだった。
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