独リ書ク恋慕

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◇  オカルト研究会。と言えば割とどこの高校でも大人しくて好奇心旺盛なオタク男子の集まりを想像するだろう。しかし、この高校のオカルト研究会は名ばかりであった。  オカルト研究の為と称して廃墟をたまり場にして隠れてタバコを吸い、夜中まで平気で出歩いては魔方陣とか言いながら高架下の壁にスプレーでいたずら書きをする。  要はただの不良の集まる部だ。 「いやだからさぁ、絶対ストーカーの霊が人形にとりついたんだって」  フスィー…気怠そうに煙を吐きながら別の少年が興味なさげに返す。 「作ってるって。窓割れるとか生首転がってるとかいちいち盛り過ぎ」  煙草をふかしている学ランを着た黒髪の少年の横でしゃがんでいた、同じ学ランを着た背の高い少年が笑いながら続けた。 「『怪奇コレクター』は押入れ前で朝までそのまま気絶してて、もう一人は玄関で気絶してたんだろ? その動画平気で配信してる時点で絶対やらせだよなぁ…」  ちなみに動画の再生数は今のところ数万止まりのようだ。 「んだよ…人がせっかくオカルト部っぽいネタ見つけてきてやったのに」  真昼間っから明るい廃墟に集まっていつものようにだべり始めたものの、皆どこか退屈していた。  面白くなさそうに煙草に火をつけたスマホを持った学ランが、がばっと別の少年の肩を抱き込む。 「なぁ、ツチえも~ん。せめて動画見てくれって。なぁ~」 「のびたくーん…。俺の名前、土御門(つちみかど)だから。土衛門(ツチえもん)じゃねぇから」 「いーじゃん! 土座衛門(どざえもん)、霊感あるんだろ? 見ろよぉ~」 「だから土座衛門でもツチえもんでもねぇってッ!!」 「なぁ、土下座衛門(どげざえもん)~」 「どんどん酷くなってンじゃねぇかッ!!」
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