独リ書ク恋慕

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「んー…なんか夏休みに部活っぽい事しろよって先輩たちに言われてさ。そーいや俺ら全然部活っぽいことしてねぇなぁ~…って」  そしてこの天然である。そりゃオカルト同好会は名ばかりなのだから当たり前だ。ついでにその先輩たちは完全に景時で遊んでいる。何しろ彼らは景時の霊感はカケラほども信じていないし、殴らなくても言うことを訊くお人好しの景時は彼らにとって絶好の玩具なのだ。 「いーじゃん別にやんなくて。めんどくせぇし」  適当にやったことにしとけば? といつものように無表情で言い放つ和人に、ほんの少しいつもと違う表情で景時は笑った。 「お前、夏休み暇だって言ってたろ? それでさ、良かったら俺ンちこねぇ? 実家の兄貴に紹介しときたいんだ。ま、あの動画もちょっと気になるし」  口実のように最後に一言付けたしてまたいつものように笑う。  そう言われれば黙ってついて行くよりほかなかった。  景時が去年の秋に入部して早一年近く。  実家に居場所がなかった和人は独り暮らしの景時の家に居る時間がいつの間にかどんどん増えて、気が付いたら告白したわけでも何でもないのにそんな関係になっていた。  実際、この男に家族に紹介したいと言われれば悪い気もしなかったわけで。
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