サーフボードでお届け物を

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 ◇◇◇  集中して考えていたらいつの間にか寝てしまっていたらしい。かーちゃんに「夕食!」とお尻を引っ叩かれて起きた。時計を見ると、もう8時。  リビングに降りると案の定、父ちゃんも帰ってきてた。  優香はお風呂に入っているのか、いなかった。あいつ最近、ませてるのか一人でお風呂に入りたがる。そしてそれを俺に自慢する。別にいーじゃないか。まだ父ちゃんと一緒に風呂に入ったって!  「随分と遅めなお昼寝だったな」  「まったく。毎日毎日遅くまで起きてるからこういうことになるのよ」  かーちゃんは怒って、キッチンでガチャガチャやっている。俺の夕食の準備だろう。父ちゃんはそんなかーちゃんの言い分を聞いて、にこにこ笑っている。  そして「いいんだよ、子供は夜更かししてなんぼだ」と、声を潜めて俺にウインクした。  やっぱり父ちゃんは俺の味方だ。  それに俺の父ちゃんはハクシキなのだ。俺が漢字は書けないが、同級生より多くの言葉を知っている (父ちゃん曰くゴイリョクが高い) のは、ほとんど父ちゃんと父ちゃんの持ち物の本や漫画から教えてもらったタマモノだ。  あ、そうだ。  「なあ、父ちゃん。シャンクローズって知ってる?」  「なんだい?何かの漫画の名前かい?」  父ちゃんは飲みかけのビールの缶を置いて、質問を返した。やっぱり父ちゃんでも知らないのか……。とりあえず、今日、エミリーとの会話をなるべく再現 (エミリーの声はきちんと甲高く) して、父ちゃんに伝えた。  「なるほど。エミリーちゃんが言ってたのか、そのシャンクローズというのは」  「あんたの耳じゃ聞き取れなかったなんかの英単語なんじゃないの?」  と、かーちゃんが俺の夕飯をテーブルに置きに来た。  「それはそーなんだけどさぁ……でもこのくらいまでしか聞き取れなかったんだって」  むくれながらお茶碗をひったくるように受け取って、かき込んでいると、やがて俺の話を聞いて、考え込んだ父ちゃんが口を開いた。  「高山さん家の奥さんは、たしかオーストラリアの人だっけ?」  と父ちゃんはかーちゃんに聞いた。  おーすとらりあ……?どこかの外国の名前だ。どこにあるかは知らない。  かーちゃんが頷いて、「そうそう確かシドニーとかそっちの方。いいわよねぇ、ロックスエリアとか一度くらい行ってみたい」とかなんとか言ってる。  「じゃあ、智明。父さん、分かっちゃったかもしれないぞ」  父さんはいたずらっぽい顔をして、というより俺とゲームを遊んでいる時みたいな子供っぽい顔をして、こっそり耳打ちした。
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