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・6
「……あー、きっつ……」
誰に言うわけでもなく、わたしはそうつぶやいて、ベッドの上に寝転がる。
近頃は、寝ても覚めても勉強勉強、気持ちが休まるスキなどなく、本当にしんどい日々が続いている。
……お父さんは、今日は帰りが遅くなると言っていた。ごはんも外で済ませてくるらしい。
となると、今夜の夕飯は、わたしひとり。つくるのも面倒だし、買ってくるのも面倒だし、というか食べるのも面倒くさい……。
「……イクレンジャー。はやくねえちゃんを癒やしてくれー……」
ごろんと寝返りをうつ。……と。わたしの言葉が通じたわけでもないのだろうけれど、ちょうどその瞬間、いくからメールが届いた。
スマートフォンの画面をタップする。メールには、何か1枚の写真が添付されているようだった。
そして、メッセージは、ひとこと。『夜の花畑を送るから、これ見て元気になりやがれ』と書いてあるだけ。
……いったい、なんの写真だろうか。
「…………え?」
夜の花畑――とあるから、もしかしたら打ち上げ花火の写真でも送ってきてくれたのかな、と思っていたのだけれど、違った。
それは、小さな小さな線香花火を、顔を歪めながら、恐る恐る両手に持つ、いくの写真だった。
……思わず苦笑してしまう。
「……ばか。あいつ、まだ花火がこわいんだ……」
小さくつぶやく。
それでも、そんな写真を頑張って撮って送ってきてくれた事がうれしくて、目頭が熱くなる。
「……。写真から、線香花火の煙でも届いたかな」
言いながら、わたしは両手で目を、ごしごし擦った。
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