【 第二話: 恋愛サブスクリプション、はじめました♪ 】

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【 第二話: 恋愛サブスクリプション、はじめました♪ 】

 そんなお兄ちゃんが、電話で突然こんなことを頼んできた。 「えっ? 若菜にお兄ちゃんの『』になってほしいって! そ、それって、どういうこと?」 『ほんとゴメン! もう若菜しか頼む人がいなくて……。若菜、もう夏休みだよね?』 「えっ? う、うん、夏休みだけど……」 『電車賃ならお兄ちゃんが出すから、明日、東京へ来れない?』 「明日……?」 『ああ、急で悪いんだけど、明日来れないかな?』  それは、思いもよらない、まさか、まさかのお兄ちゃんからのお誘いだった。 「う、うん……。いいよ……」 (やったぁーっ! お兄ちゃんと久しぶりに会える……) 『ありがとう、若菜! 助かるよ。さすが、俺の妹!』  4ヶ月、お兄ちゃんに会えなくて、ずっと淋しかった。  毎日、夜になるとベッドの中でいつも泣いていた……。  それが、お兄ちゃんから私に『彼女の代わり』になって欲しいと言ってくれたんだ。  そのことが、とても嬉しい。  それでも、この思いを悟られないように、私はこうお兄ちゃんに言った。 「あっ、お兄ちゃん。私からもお願いがあるんだけど、いい……?」 『ああ、いいよ! 何でも聞くよ!』 「夏休みの宿題があるんだけど、そっちへ行ったら教えてもらってもいい……?」 『ああ、いいよ! そんなことなら、何でも教えてやるよ!』 「ああー、良かったぁーっ! じゃあ、明日、お兄ちゃんのところへ行くね!」 『ああ、若菜、ありがとう』  私は思いがけず、お兄ちゃんのところへ行くことになった。  しかも、何故かお兄ちゃんの『彼女(かのじょ)』として。  お兄ちゃんは、背が高くてかっこ良かったから、中学・高校とすごく女の子にもてていた。  でも、スポーツと勉学に励んでいたこともあり、多分、彼女は作らなかったと思う。  だから余計に、そんなお兄ちゃんに私は()かれてしまったんだ。  予想通りといえば、そうなんだけど。  やっぱり、東京へ行っても、モテモテみたいで、その女の子たちからの誘いを断るために、私が呼び出されたって訳。  それでも、お兄ちゃんのそんなお願いが、私にはとっても嬉しかった。  その日の夜は、ふとんに入ってからも、明日のお兄ちゃんとのことで、胸がドキドキしてなかなか眠れなかった。  窓の外からは、やさしい虫の音が、明日のお兄ちゃんと私の久しぶりの再会を歓迎するかのように、温かく歌う音楽のようにいつまでも聞こえていた。
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