68人が本棚に入れています
本棚に追加
【 第二話: 恋愛サブスクリプション、はじめました♪ 】
そんなお兄ちゃんが、電話で突然こんなことを頼んできた。
「えっ? 若菜にお兄ちゃんの『彼女の代わり』になってほしいって! そ、それって、どういうこと?」
『ほんとゴメン! もう若菜しか頼む人がいなくて……。若菜、もう夏休みだよね?』
「えっ? う、うん、夏休みだけど……」
『電車賃ならお兄ちゃんが出すから、明日、東京へ来れない?』
「明日……?」
『ああ、急で悪いんだけど、明日来れないかな?』
それは、思いもよらない、まさか、まさかのお兄ちゃんからのお誘いだった。
「う、うん……。いいよ……」
(やったぁーっ! お兄ちゃんと久しぶりに会える……)
『ありがとう、若菜! 助かるよ。さすが、俺の妹!』
4ヶ月、お兄ちゃんに会えなくて、ずっと淋しかった。
毎日、夜になるとベッドの中でいつも泣いていた……。
それが、お兄ちゃんから私に『彼女の代わり』になって欲しいと言ってくれたんだ。
そのことが、とても嬉しい。
それでも、この思いを悟られないように、私はこうお兄ちゃんに言った。
「あっ、お兄ちゃん。私からもお願いがあるんだけど、いい……?」
『ああ、いいよ! 何でも聞くよ!』
「夏休みの宿題があるんだけど、そっちへ行ったら教えてもらってもいい……?」
『ああ、いいよ! そんなことなら、何でも教えてやるよ!』
「ああー、良かったぁーっ! じゃあ、明日、お兄ちゃんのところへ行くね!」
『ああ、若菜、ありがとう』
私は思いがけず、お兄ちゃんのところへ行くことになった。
しかも、何故かお兄ちゃんの『彼女』として。
お兄ちゃんは、背が高くてかっこ良かったから、中学・高校とすごく女の子にもてていた。
でも、スポーツと勉学に励んでいたこともあり、多分、彼女は作らなかったと思う。
だから余計に、そんなお兄ちゃんに私は惹かれてしまったんだ。
予想通りといえば、そうなんだけど。
やっぱり、東京へ行っても、モテモテみたいで、その女の子たちからの誘いを断るために、私が呼び出されたって訳。
それでも、お兄ちゃんのそんなお願いが、私にはとっても嬉しかった。
その日の夜は、ふとんに入ってからも、明日のお兄ちゃんとのことで、胸がドキドキしてなかなか眠れなかった。
窓の外からは、やさしい虫の音が、明日のお兄ちゃんと私の久しぶりの再会を歓迎するかのように、温かく歌う音楽のようにいつまでも聞こえていた。
最初のコメントを投稿しよう!