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学校が終わり帰路に就く。後ろに女子の集団がいる。紀香ちゃんもいるようだ。紀佳ちゃんの家は僕と同じ方角だ。僕は通りを真っ直ぐ行って左に折れたところの住宅街の中にある。紀香ちゃんの家はその更に先だ。紀佳ちゃんは噂では庭にゴールデンレトリバーを飼っていて家の中には猫を二匹飼っているらしい。ちなみに治樹くんの家は学校の近くだ。近いのにいつも遅刻ギリギリである。
川を左手に見ながら歩いていると前方から金髪の女の子が歩いて来た。外国の女の子のようだ。すれ違いざまに瞳を見たら綺麗なブルーだった。
「あ、ルーシー」
後ろを歩いていた紀佳ちゃんが声を出した。どうやら知りあいみたいだ。
「紀佳、迎えに来ちゃった」
ルーシーと呼ばれた子は日本語が話せるらしい。良かった。万が一自己紹介でもすることになったらまたあれを言わなければならなくなる。「マイ・ネーム・イズ・ハジメマシタ」まったく親は何を考えて名前を肇なんかにしたんだ。
「暑いから家で待っててくれればよかったのに」
今は九月だけどかなり暑い。白いワイシャツの襟もとが汗で濡れているのが自分でも分かる。学校の制服ってなんでこんなに暑苦しいのだろう。ズボンだって夏の生地だけど紺色だから太陽の熱を吸収してしまっている。
「紀佳が帰ってくる時間だと思って。お母さんがアイスを買って来てくれたよ」
ルーシーはそう言ってニコッと笑う。眩しいくらいキレイだ。
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