マイ・ネーム・イズ・ハジメマシタ

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「帰る途中、ハンカチ落としたよ。学校で渡そうと思ったんだけど、ここ散歩の通り道だし、ルーシーが男友達が欲しいって言うの。ルーシーはイギリスから日本の文化を学ぶために来たんだよ。一カ月私の家に住む予定なの。あの、一緒に犬の散歩しない?」  紀佳ちゃんは学校では物静かで一人で本を読んでいるようなタイプだったから、こうして家に来たのは意外だ。 「いいよ。大きな犬だね。名前なんていうの} 「ハナ、頭が良いの」 「そう、ハナ、散歩に行こう」  紀佳ちゃんがリードを持って僕たちは三人と一匹で狭い通りを歩く。ちょっと行くと右側にグラウンドがある大きな公園がある。紀佳ちゃんは何時もそこでハナを遊ばせているんだという。 「あの、肇くんっていうの?フルネームは?」  ルーシーに訊かれる。仕方がない。言うしかないのか。 「ハジメマシタだよ」 「えっ?」 「何かをはじめたって訳じゃないんだ。名字が真下って言うんだ。ルーシーの居た国では名前を最初に持ってくるんだろ。それにしても日本語上手いね。何処かで習ったの?」 「私、イギリスで日本語学校に通っているの。それに親戚が日本人で小さい時から日本語を使ってるの。私、将来は舞妓さんになりたいから」  イギリス人で舞妓さんになりたいだなんて変わってるな。僕は逆にイギリスに住んでみたい。頭が良かったら将来は留学したいくらいだ。でも、いちいち自己紹介するのは嫌だな。  グラウンドがある公園に着いた。紀佳ちゃんは持っていたビニール製のトートバックからボールを出した。
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