37人が本棚に入れています
本棚に追加
夕闇迫る森の中で、剣がぶつかり合う鈍く重い金属音と人の声、馬の荒い息が混じり合う。
「姫様! お逃げください! 姫様だけでも必ずや首都にお戻り頂かなければ!」
敵の騎馬兵に、護衛兵と共に応戦する馬上の護衛長の悲痛な声にユリアは叫び返す。
「イヤです! お父様と約束したのです! 必ず皆と一緒にフォルム・ロマヌムに帰ると!」
ユリアは馬上で手綱を繰りながら剣の攻撃を躱した。
油断していた。何故私は丸腰で来てしまったの!
後悔しても始まらない。今は何がなんでもここを切り抜けなければ!
「はあっ!」
手綱を強く引き、白い愛馬の上体を起こさせて正面の騎馬兵に前脚蹴りを食らわせた。落馬した男を、瑠璃色の瞳が睨み付ける。
「私を誰と思っている! マルクス・ユリウス・エウティケス将軍の娘と知っての襲撃か!」
最初のコメントを投稿しよう!