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優雅な歩みでレティアに近づくマルクスに、皆が見惚れていた。
ユリアの目に映るのは、記憶の中にいない母の姿だった。
愛おしそうに赤ん坊を抱く美しい母は、自分と同じ、瑠璃色の瞳と艶めく長い亜麻色の髪。
「あれが、お母様……」
届く事の無い手を伸ばした時、ユリアに頬擦りする母の声を聞いた。
『ユリア、あなたは、ユリアよ。私の大切な宝物』
この声は!
生贄として炎に身を投じた時に聞いた声!
母の声だったんだ!
ユリアは確信した。
あの時の声は言った。
『私の大切なユリア。神にお願いしました。私の命と引き換えに、あなたにもう一度、チャンスをーー』
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