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武器を持たずとも、このくらいはーー、髪を束ねていたリボンが解けた。長い亜麻色の髪が風に踊る。
「姫様、後ろ!」
正面の剣から身を躱すのに気を取られ背後ががら空きだった。振り向いた時には既に、後ろにいた馬上の男が剣を振り上げていた。
しまった!
駄目か、と覚悟を決めた次の瞬間、剣を振りかざしていた男がユリアの視界から消えた。
「⁉︎」
兵は落馬していた。首に矢が刺さっている。ザザッと茂みが割れて黒毛の馬が嘶きながら現れた。
黒い馬の馬上で弓矢を繰る黒髪に漆黒の瞳の青年は、雄雄しく神々しく、神の化身に見えた。
「カイト!」
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