【挨拶編】アネゴ探偵、天沢理香

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「あ、ほら、乾杯用の飲み物が来たわ」  男性スタッフがトレーに乗せて、所謂(いわゆる)中ジョッキよりは小さいお洒落なジョッキのハイボールと、それより更に小さめのグラスのお茶を運んできた。ハイボールの表面では、踊るように泡がプチプチと弾けている。 「このお茶は……悠乃さんだよね?」 「はい、明日は少し早いので」  理香さんが運ばれてきたジョッキとグラスのウーロン茶を配り、全員で持ち上げる。 「じゃあ、乾杯! 今日はよろしくお願いします!」 「乾杯」  ジョッキ同士をぶつけると、ゴンッと鈍い音がした。  暑い夏のハイボールは格別だ。芳醇なウィスキーの香りに、強めの炭酸の発泡感。グッグッと飲んでいくと、ジョッキを傾ける手が止まらなくなる。  キンキンに冷えた刺激が喉を潤す、さしずめ大人のコーラといった感じだろうか。 「お待たせしました、牛タンのカルパッチョです」 「牛タン? 牛タンってあの?」  続けて運ばれてきた初めて見る料理に、視線が釘付けになる。軽く炙って薄く切られた牛タンに、薄くスライスした紫玉ねぎとカイワレが添えられ、薄黄色のソースがかかっていた。 「肉でカルパッチョなんてあるんですね……私、魚のしか食べたことないかも」 「あら、悠乃さん。魚のカルパッチョって日本発祥のオリジナルなのよ」 「え、そうなんですか」
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