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理香さんの言う通り、仮にその花火やおかめやひょっとこの箸置きが本当にかわいかったとしても、買う理由にはあっても、宅飲みに持ってくる理由にはならない。
いや待て、もし当日行きがけに買ったんだとしたら持って行ってもおかしくはないぞ? 西畑は「昨日買った」と言ってたらしいけど、それが嘘だとしたら……いや、それはそれで、今度は嘘をつく理由がない。
そして、買った時期がいつであれ、20代前半の男子が自分で購入した箸置きを宅飲みに持って行くというのが、もう何だか現実味がなさすぎるのだ。
と、すると…………ん、ひょっとして…………?
「んー、結構難しいわね……久登君、なんか浮かんだ?」
更に10分ほど経った頃、頭の休憩がてら、こちらに水を向ける理香さん。少しだけ姿勢を正し、胸を張ってみる。
「ええ、ちょっとした発見はありました」
「え、本当!」
俺の言葉に、彼女だけでなく、右にいた安城も興味ありげにグッと顔を寄せた。自分の謎解きを披露するのは気分がいい。
「シンプルに考えるのがポイントですね。箸置きをわざわざ安城さんの家に持って行った。それはつまり、因果関係が逆なんです。『買ったから持って行った』のではなく、『持っていくために買った』ということなんです」
数秒の間を置き、理香さんはワクワクの薄れた表情で頷く。
「ああ、うん、それは分かってるんだけどね」
「そうなんですか!」
こっちは重要な手掛かりを掴んだ気でいたのに!
「問題はその持って行った理由よ」
「……そうだ、その箸置きを売りたかったんじゃないですか? 実は自分とか友達が作ったヤツで、誰かが欲しいって言ったら売るつもりだった。だから実物を持って行ったんです」
「久登君、なんでそれで西川君が100均って言っちゃうのよ。100円以上で売れないじゃない」
「しまった、そうだった!」
頭を抱える俺に、安城がブッと吹き出す。俺の意見と理香さんのツッコミがツボにハマったらしい。
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