【推理編】100均にて

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 いつの間にか、時間は22時を回っていた。カウンターの人も入れ替わり、前の店でしこたま飲んだらしい同い年くらいのグループが、日本酒居酒屋なのにハイボールばかり頼んでいる。 「検証って言ってたけど、リーちゃん何か実験でもするの?」 「んん、どっちかっていうと調査だけどね。心配しないで、キュー君にもちゃんと手伝ってもらうから」 「俺はそんな心配はしてなかったぞ」  いつもの軽口。お互い20年近く話しているせいか、自然とハイテンポなやりとりになる。 「まさかリーちゃん、雑用じゃないよね?」 「雑用よ」 「やっぱり!」 「大丈夫、私もやるから。仲良く分担ね!」  こうして彼女から明日やる仕事を聞き、その日はお開きとなった。  *** 「あっつ……」  翌日の昼休み、ランチに行った足で近くの100均を巡る。鉄アレイのような形をした、乗れそうな程に質感のある雲。  その雲の横から顔を出し、容赦なく照り付ける太陽に、街にドット、ストライプ、チェックと様々な模様の日傘が咲いた。  少し歩くと学生が遊びに来るエリアになるので、歩いていける距離にブランドの違う100均が2~3軒あるのは助かる。  もっとも、昨日その話をした結果、「ワタシの会社の近くには1軒しかないから、キュー君3軒、ワタシが1軒ね」と不公平な分担になったわけだけど。 「ううん、箸置きは……これだけか」  西畑が持ってきたという箸置きを探すものの、それらしきものは見つからない。2軒目も犬やペンギンなど、動物のものしかなかった。  そして3軒目。 「箸置き……箸置きは、と……あった!」  茶碗、汁椀、カトラリーと3段の棚に並ぶ食器のコーナー。その中の箸の横に、数種類が雑多にカゴに入った形で、目当てのものは置かれていた。  そして、それが理香さんが予想した通りの状態で売られていることに感服してしまう。やはり、酔ったときの彼女の推理力は並外れている。  ONLINEで「ちょっとだけ電話しても大丈夫?」と聞くと、「OK」というマークが送られてきた。 「リーちゃんの言った通りだったよ。」  それを聞くと、スマホから彼女の満足気な声が聞こえた。 「じゃあワタシの方で別の準備しておくから、明日か明後日で安城さんにもう一度会えないか調整してもらっていい?」 「うん、分かった」  そして、そのままSNSを開き、安城にメッセージを送る。  本当は明後日の金曜日の方が翌日休日ってことで都合が良いかもしれないけど、早く謎解きを聞きたかったので木曜で打診をしてみた。
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