【謎解き編】おかめとひょっとこ

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「そこまで分かったから、あとは高知、おかめ、可杯(べくはい)と連想していくのは容易だった。久登君のヒントもあったしね」 「あ、この前秘密にしてたヤツですね」 「実は西畑君が持ってきたのは箸置きじゃないっていう推理よ。結果的には当たってたってことだしね」  確かにそれはその通りで、俺の説は間違いじゃなかったんだけど、まだ全ての謎が解けたわけじゃない。  そしてその疑問は、安城も同様だったらしい。 「あの、天沢さん。今の理香さんの推理は、おかめとひょっとこが可杯だったってことだけで、なんで西畑がその2つだけオレの家に持って行ったのかって謎は残ったままですよね?」 「おっ、安城君、鋭いわね。でもそれは簡単よ。西畑君が持っていったのはおかめとひょっとこだけじゃない」 「え、それって……」 「彼はおそらく天狗と独楽も持って行ってた。つまり彼は、君の家で可杯で遊ぼうとしたのよ」  思わぬ方向に話が転がったものの、よく考えたら当然かもしれない。このおかめとひょっとこだけあっても何も使えないのだから。 「……ん? でも理香さん、ますます変じゃないですか? じゃあなんで西畑君は箸置きだなんて偽って出したんですか? それによく考えたら、他の花火や提灯の箸置きは一体何で用意したのか、まだ分かってません」 「そうなの、今回の一番のポイントはそこね。ワタシの推理も間違ってるかもしれないけど」  言い淀むように両手を擦り合わせると、彼女は安城の方に視線を向けた。 「西畑君は可杯をやるつもりだった。でも控えめだという彼の性格を考えると、うまくみんなを誘えない可能性がある」 「あっ!」  それを聞いた瞬間、俺と安城はほぼ同時に声が出た。 「自己主張が少ないタイプだって話だから、場の流れにうまく乗れないと『面白いもの持ってきたからやろうぜ』と言えないかもしれない。そこで西畑君は知恵を絞った。そして、」  手元にあった2つの器を引き寄せる理香さん。  塗り箸を乗せてみると、おかめはちょうど良いサイズ、ひょっとこは少し大きめだけど、他のものとセットで箸置きと言われたら信じてしまうだろう。
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