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「最寄りじゃないのに、よく見つけたなあ、こんなところ」
「むふふ、いろいろWEBで調べてるからね」
豚ロースをあむっと頬張りながら、彼女は幸せそうに笑みをこぼした。切れ長なのに優しさも感じさせる目、水分の多い瞳は表面が透き通っているようにキラキラしていた。
「ホントに好きなんだな、お酒が」
「うん、好きだよ」
「…………っ」
自分のことを言われているわけではないと分かっているのに、そんなに頬を染めてまっすぐ俺の方を見て言われると、なんだか心拍数も上がってしまう。
グラスに口を付けて表情を誤魔化すのが精いっぱい。
「それにしても暑……」
そこで言葉を止める。無表情で、彼女はじっとサワーを見つめていた。
この状態のときは、黙っているしかない。
彼のことを想い出しているのだろう。3年前に亡くなった、忌まわしささえ感じているはずの、父親のことを。
もう傷は癒えただろうか。どうか、彼女が表面だけでなく、心から穏やかな日々を送れていますように。
しばらく1人の時間にしてあげようと思い、スマホを取り出してSNSを開く。
「……あ」
「どしたの、キュー君」
思わず漏れてしまった小声に反応する理香さん。
「ごめんね、リーちゃん、邪魔するつもりなかったんだけど」
「いいのよ。それで?」
「ん、4分前に依頼が来てた」
「ホント? ねえ、今すぐ来れるなら来てもらわない?」
「今から?」
「まだ20時前だからね。せっかく集まってるんだし」
そんなこと言ったら俺だって「せっかく2人で飲んでるんだし」だけど、すでに謎解きを楽しみに目を爛々と輝かせている彼女を前にそんなことは言えなかった。
「それじゃ、連絡してみるかな」
その場でメッセージを何回かやりとりする。『その場所なら近いのですぐ向かえます』と前向きな返事が来た。
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