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あるとき息子にせがまれて映画を観に行くことになった。巷で流行りのアメコミの実写版だという。
『カメレオンマスク』
言われてみれば最近CMでよくその名を耳にする。私は世間の流行に疎い。そんな私ですら聞き覚えがあるのだから、さぞ有名な映画なのだろう。
恥ずかしながら、これまで私は仕事一辺倒でつまらない人間だった。それゆえ婚期を逃してしまったのだが、今はとにかく子供と一緒に過ごすのが楽しい。正直子供騙しの映画など微塵にも興味がなかったのだが、大志のはしゃいでいる顔が見られるのならと二つ返事で快諾した次第である。
慣れない注文にモタモタしながらも、二人で一つのポップコーンとジュースのセットを買い、私たちは席に着いた。予約できることも知らずに直接映画館を訪れ、何とか取れた席は端っこだけだったが、大志は特に気にする様子もなく足をパタパタさせていた。私はそんな息子をますます愛おしく感じ、暗がりの中しげしげと彼を見つめていた。
しかし予告が終わり本編が始まると、今度はスクリーンにくぎ付けになった。ストーリーは飛行機が墜落してジャングルの奥地を彷徨っていた主人公が新種のカメレオンに触れてしまい、特殊な能力を得て、救出後それを使って大活躍するというトンデモ展開だったが、迫真の演技や演出にただ魅せられてしまった。いつの間にか私の方が子供以上にのめり込んでしまい、ラストシーンでは歓声まで上げる始末だった。
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