カメレオンマスク

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 憂うつな気持ちへ追い打ちをかけるかのように、参観日のテーマはお父さんだった。お部屋の後ろに居並ぶお父さんたちは、私の偏見かもしれないが、みな若々しくエネルギーに満ち溢れている。私はその中で卑屈にも肩をすぼめているしかなかった。  お遊戯が一通り終わると、一人ずつ自慢のお父さんの似顔絵を持って、好きなところを発表していった。女の子は特にかっこいいお父さんだと言う子が多く、その子のお父さんは赤面したり頭を掻いたりしていた。  大志の番が来た。私は急に不安になり、ハゲでみっともないお父さんだと言われたらどうしようと視界がぐにゃっと歪んだ。 「ぼくのパパはぼくの好きなことを何でもしてくれます。カメレオンマスクを見たり、おもちゃを買ってくれたり、パパはぼくのヒーローです」  私の心配をよそに堂々と言い切った大志に拍手喝采が起こり、私は嗚咽を漏らしながら目頭を押さえていた。
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