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※ ※ ※
授業終了のチャイムが鳴り、生徒たちも僕もそれぞれ六時間目の準備をする。
机上でプリントをまとめていると、学ランのボタンが視界に入りこんできた。
「先生」
「ん? どうした?」
顔を上げると、目に入ったのは光の瞳。
数ヶ月前、居残りで宿題に取り組んでいた時にはなかったなにかが、その中に宿っている。
「大人って、意外と楽しそうっすね」
「……お、そうか?」
教具を片付けながら、短く相槌を打つ。
口角がつり上がったのは、語尾が「あ」の音だったからだけではない気がした。
「うん」
斜め下を向いて呟く光。
「俺、頑張って勉強してみるよ」
僕にというよりは、光自身に向けられたように聞こえる言葉。
ゆっくりと吐き出されたその宣言をしっかり受け止め、教員として返答する。
「じゃ、来週までの提出物、しっかりな」
「うん、任せて」
休み時間や部活動中にしばしば見られる光の生き生きとした表情を、僕は今初めて、教室でも見ることができた。
自分の席に戻っていく光を見届けた僕は、ふと廊下の人影に気づく。
すっきり整理された書類を抱える岩上先生が、僕を見て得意げに微笑んでいた。
僕が小さく会釈するのとほぼ同時に、踵を返してどこかへ向かう。
——今度は、僕が岩上先生にご馳走しなきゃだな。
頭の中でそう呟きながら、授業で使った歌詞の穴埋めワークシートをファイルに入れた。
水色のクリアファイルの中、四十人分のfutureに赤い丸がつけられていた。
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