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『結婚』よりも先に『お願い』だ。
私は少し考える。
ふむ。
確かにお互い、同じなのも変わらん。
晋作が望めば、結婚をとは考えた。
でも晋作も私が望めば、結婚をにもなる。
だが…
『結婚』になれば…
必ず発生するのが『親類関係』だ。
どうするのが良いのか…
私の事を晋作は理解してくれるが。
そもそも、晋作の身内関係だって。
まぁ、知ってるだけに。
余計に悩むんだが…
だがなぁ。
別に結婚以前に、既に一緒に住んでるし?
何も変わらんのだが…
でもなぁ。
晋作は違うだろう?
**************************
とある日。
主寝室のベッドで、晋作が、夜にだった。
相変わらず、私はいつも翻弄されてしまうのだが…
少し私が休んだ後だった。
「なぁ、彩香は前に言っていたな?
俺が望まなければ、結婚もしないと。
でも俺もそうだろう?
彩香が望まなければ、結婚すらしないと。
それは今と何も変わらないと思うんだが…
彩香は何か考えてるのか?」
私はそれを聞いてだった。
少し考える。
確かにまぁ…
そうなんだがなぁ。
「だが、晋作?
私と晋作での『同意』があれば可能だがなぁ。
私の方だったら、まぁ。
問題はないだろうが…
晋作の方を考えると…」
晋作は少し不思議そうに聞いてくる。
「俺か?
俺の方は何も問題はないと思うが?
まぁ、俺の場合。
最初から『独身』も覚悟してるから。
別に問題は…」
私は首を横に振った。
「まぁ、私もそうだったから。
判らない訳でもないんだがなぁ?
でもな、結婚になれば…
例え結婚式はしなくても良いとしてもだ。
親類になるだろう?
そうなれば、晋作の両親だって。
関わってくる。
それは…
私と晋作が、いくら同意をしていてもだがな?
晋作の両親を考えると…
私では『反対』されるだろう事は、簡単に判るからなぁ。
当たり前だが…」
晋作の方がまた驚く様子だった。
「どうしてだ?
俺が選んでるのに、俺の両親の事は関係ないだろう?」
私は少し溜息を出した。
「いや、これは…
晋作に限らない問題なんだぞ?」
それで少し考える様子だったが、それでも不思議そうな顔でだった。
「俺に限らない?
誰でもあると?」
私は少し晋作を見る。
この顔は…
確かに判ってない顔だな。
「ふむ。
私が知った事実は多いが、ザックリと言うぞ?
まぁ、私も流石に全部は判らんがなぁ。
でも大抵の親ってのは…
自分の『子供の幸せ』すらも、願うものが普通だろう。
だから、まぁ。
私との結婚は、反対される事は普通だろうな。
これはなぁ。
別に晋作に限らん。
私が知ってる中でも、どの人でも似たような『問題』は出てたからなぁ。
簡単に言えば、それはもう…
『子供や家庭』の事だ。
まぁ、都心に住んでる私達なんて、まだマシらしいが。
田舎の方だと更に厳しいらしいからな?
『独身』が問題じゃない。
田舎の場合、話でも良く聞いたが。
結局はまぁ、跡継ぎの事があるからだろう。
家を守る上で、田舎ではそれが今だに大きいらしいからな。
私も上京してか?
それでも、どうにか生活してる人達ですらだったが…
それを聞いた時は私すら驚いたんだがな。
結婚の認識が未だに古過ぎる。
更に家同士の繋がりだろうなぁ。
それがかなり強いから、この都心での生活に苦しくてもだ。
まぁ、実家に戻りたがらない人すらも結構居たからな?
確かに都心で『独身』は通用するが、田舎では通用すらしないと。
それをいろんな話を聞いた時は、私すらも驚いたが…」
「彩香ですらも、驚くぐらいだったのか?
そんなにか?
俺の周りにだって『独身』は半数以上いるが?」
「あぁ、私もそれはそうだな。
晋作の感覚には似てるだろう。
だが、まぁ、田舎の縛り?
みたいなのは、未だに根強いらしい。
そんな話を聞いてると。
結局は『家庭』よりも、『子供』だろう。
まぁ、『子孫』を残す為にとの結婚の認識が強いんだろうがな?
それには否定はしないが…
後、晋作の場合だがなぁ。
両親の話は少し聞いた事があるが…
まぁ、私は『反対』されるだろうな。
それぐらいは私の方が判りそうな気がする。」
晋作も少し考えてる様子だったが、聞いてくる。
「俺の両親は反対しないと思うが?
どうしてそう思うんだ?」
私は晋作に聞いた。
「両親の職業は?」
晋作は不思議そうにだが答える。
「外務省だが…」
私は若干、溜息を出した。
「それなぁ…
まぁ、多分だが。
晋作がまぁ。
規格外なのは置いててもだ。
きっとだが、『孫』を期待されてるだろ?」
晋作が若干、驚く様子だった。
やっぱりかと、私は内心思う。
「いや、私は別に良い。
これは『自業自得』だからな?
でもそんな親のところで、私の場合。
まぁ、確実に『反対』だろうからなぁ。
特に晋作は、一人息子だ。
尚更、それが普通だろう。
だったら…」
そうだな。
どうしても、そう。
私ではない人の方が…
晋作には…
「彩香?
今、また考えてるだろ!?
それなら、また俺が止めるだけだぞ?」
私は首を横に振った。
「まぁ、確かに少しは考えた事は認めるが。
だからこそ、私が動いたのもあるが…
でもこれは晋作に限らんからな?
だから晋作が気にする事もない。
私の問題だ。」
それに晋作がすぐ私に言った。
「違う!?
俺が悪いんだと、言ってるだろう!?
彩香は悪くないと!!」
私はでも首を横に振った。
判るからこそ、もう普通と言った。
「晋作…
これはもう、どちらがとかは。
もう関係ないと、気付いてないだろう?」
「何?」
「つまりだな?
親類関係になればだ。
『こちらの事情』なんて。
周りからは配慮されん事だ。
まぁ…
稀に駆け落ちぐらいが限界だろうか?
でも、そんな事をしたって、当人同士だけ。
それですら周りの親類関係、全てを巻き込むからな?
下手したら、警察沙汰にもなる。」
晋作は驚く様子をした。
私はそれでも、軽く見ただけで、視線だけ外して普通に言った。
「そういう事だ。
世間でも、まぁ、それが『普通』だからな。
どんなに『自由』になりたくても。
流石に全て、親類が居ない人は。
最近だと、多々居るだろうが…
それでも『戸籍』を警察が調べて、遠縁やら、縁者をと探し出して動く。
それすらも『相続』に関してなら、もう…
拒否や放棄か?
そうする人も多いからなぁ。」
「放棄だと?」
晋作はまた疑問なのか不思議に聞いてくる。
私はまた簡単に言った。
「そりゃ、そうだろう?
ほぼ全く関わりのない人、遠縁。
縁者になれば、それでいきなり『遺産相続』までになればなぁ。
相続税だの、余計な事から避けたがるだけだ。
まぁ、つまり、余計に『金がかかる』って事だけだからな。
判り易く言うなら、私が『毎月3万』程度の食費。
その中で出来る貯金なんて、少ないだろう?
それが普通の人達からしてみろ?
相続税なんて、払えんからな。
放棄しなければ、もう…
『自己破産』だな?
そんな事は、本末転倒だろうから、誰だって避けるだけだな、うん。」
晋作がまた動揺する。
「自己破産だと…
遺産相続でか?」
「当たり前だ。
その分の税金が払えんし?
それで自己破産して、最悪は生活保護か?
そうでもしないと、食べれんから。
死ぬだけだぞ?
そんな事、誰だって避けるからなぁ。
私でもまぁ、それは判らんでもないか?
私なんて、まだ3万程度だが。
それより少ない人なんて、多過ぎるからなぁ…
まぁ、確かに日本は無駄に税金が高い割に?
あんまり、政治家関係ってのは、一般人の生活なんて、知らんから。
何も改善されんだろうなぁ。
一部の人達との格差が出るだけか?
私がしてたバイトでも、今の若い世代もだな。
『海外』すら検討する子も居たぞ?
バイトで貯金をして、これは『事前準備』だろうな。
それぐらい、『今の日本』はあまり?
若者の方が負担が大きいぐらいか?
それを政治家とかは気付いてるのに、変える動きすら、あんまり見せんし?
そんな若者達からしたら…
だったら、『他の国』にって発想は、私も判らなくもなかったなぁ。」
「それは…
本当か!?
そんなにか!?」
私は晋作を見る。
もう動揺どころでもなく、完全に困惑してるのが判る。
思わず笑った。
「あははは!!
晋作はまぁ、信じられんだろうが。
でも事実だな、これ。
あははは!!
まぁ、私も判らんでもないか?
大体なぁ、NHKだってそうだな?
私もあれは、確かに『理不尽』なもんだと。
思ったしな、判るな、うん。」
「理不尽?」
不思議そうな顔の晋作を見た。
私は考える。
私は晋作と目が合う。
ふむ、私は考え、目を閉じる。
「なるほど、晋作。
知らないだろうが。
もう最低限生活で知った私は、今から一方的にだが?
晋作にじゃないぞ?
これは一人愚痴りだな?
うん、もう、私すらもその『理不尽』だな。
そりゃそうだろって思う事は多かったぞ?
例えばテレビな?
全く見てもいない。
ただ、家電があるだけ。
ましては、NHKなんて、尚更?
一回も見てもいないのにだぞ?
使ってもいないのにだぞ?
それなのに、何なんだ?
国民の義務としてか?
強制的に金を請求されるんだぞ?
まぁ、安いとは言えなぁ。
それが普段から僅かな少ない安い生活費からだ。
更にもし、私よりも低い生活費。
3万以下の人達からしてみろ?
そんな僅かな食費からだ。
どれだけ勝手に、税金としてか?
何で強引に金は取られるんだ?
もう、おにぎり1個すら食えんぞ?
使ってもいないのに、金を取られる?
食事すらも出来なくなるが。
そんなのすら、一切、関係なしにだぞ?
まぁ、これで使ってるのに金がかかるなら。
それは普通に、皆が払うだろうがなぁ。
誰も文句は言わん。
でも、使ってもいないのに金だけ取られる…
あんな『理不尽』が普通にあるからなぁ。
正社員ならでもマシだが。
私がバイトしてるだけの時にもだがそう。
他の若い子とかでも、フリーターとかだと。
年金すら払ってない子も多いか?
そりゃ、そうだなと思ったな、うん。
毎月3万あったとしてだ。
その中の半分以上が、年金?
そりゃ、払わんだろうな。
そんな40年以上先の為よりも、今生きる為の食事優先だろ…
と、まぁ、他にも色々とあり過ぎるぞ?
『日本以外』を考える発想も普通に出ても?
私は不思議でも、何でもないって知った。
本当に思うな、あれは。
そんな若い人達だが?
こんな日本に?
更に結婚?
子育て?
いくら金がかかる?
それなのに、働けばその分、更に税金だけは高くなるばかり。
こんなんじゃ、いくら働いても生活苦だろ。
だからもう、皆が避けて『独身』だ。
そして出たのが少子化?
更に高齢化社会?
もう、当たり前だとな。
そもそも、子育ての為の金が使いたくても。
最初から国が金取るだろ。
だったら、子供を産める人達だって。
『独身』を選ぶ。
そんな世の中なのに、少子化問題なんて。
何にも?
対策なんてしてても手遅れ、対処しても既に遅すぎるから、また別問題だ。
だったらもう、そんな選択。
しない人が増えるに決まってるだけな。
確かにそんな日本に?
私も若干、国外は考えたがなぁ。
だが、そもそも、貯金もないしな?
うん、まぁ、あれじゃ出来ないし?
ある意味、今じゃ無理なだけか。
だから若い人でも、それすら最初から考えて。
バイトで貯金か?
それにはまぁ、なるほどと思ったぞ?
私も貯金しとけばと考えたぐらいか?
ちゃんと考えて、計画的にしてる若者だって居るしなぁ。
そうだな、うん。
他のバイトやら、他の会社でも普通に?
色々聞くぞ?
バイトの学生さん達すらなぁ。
親が学費を払えないからと、必死にバイトしてか?
自分で頑張って更に?
おまけになんだ?
あの奨学金制度?
そりゃ、それを使えば学費として学校は行けるが?
それすら結局、国との借金だな。
で、いざ働き出したら、新卒の安い給料からか。
その中から、国が借金の請求か?
そんなんだったら、払えなくもなるだろ!!
だったらもう、あんなんだったら、就職の方がまだマシだろ!?
学歴でしか残らない、それすらどうにかして就職できても?
どれだろうが最初は高い筈もない給料から国が借金請求か?
何にもならんな。
国からくる借金なら払わないといけないなら、余計にまた金取られるから?
また更に働きながらも副業か?
そんなんなら、奨学金制度なんて意味ないだろ!!
確かに、日本は『お先真っ暗』?
それは良く聞く事だな。
当たり前か?
そもそも、国民の苦労すら知らない政治家が?
出来る訳ないな、うん。
更に会社により、サービス残業すら、金出さない会社すら多いし?
ブラック企業だろ。
自営業なら365日、働きっぱなし?
それすら、ろくな贅沢すら出来ない生活。
そんな中で?
今なら学歴だけでの就職すら困難だし?
大抵がどうにか生活出来るレベル?
まぁ、確かに、皆が嫌がるよなぁと。
言ってる意味は理解したな?
おまけに何だ?
悪徳詐欺すら、善人を騙して金を奪って詐欺か?
振り込み詐欺なんか良く聞くし?
あんなん警察との、いたちごっこだな。
被害にあわないように、自分の身は自分で守るのも当たり前だな。
都心じゃ毎日のように、判らん事件ばかり。
警察すら、事件が発生してからじゃなきゃ動かんし?
後から警察が動いても遅過ぎて、それすら何にも意味ないだろ!!
そんなこんな日常や将来なんかに絶望して、今の日本じゃ、『自殺者』すら増えてくばかり。
まぁ、そうだよな?
大小関係なし、勿論理由も様々だがなぁ。
更に遺族には慰るよりも賠償金か?
でもこんな状態で、それすら何にも解決策すらもなくか?
その上に更に子供への育児での虐待で逮捕?
更に通り魔の無差別殺戮?
ずっと続く裁判してる間に別の問題で、アッサリとそれすらなくなる。
キリがないな、もう世の中おかしい、うん。
そりゃ、判らなくもないか?
やってられないと投げ出しても、仕方がないぐらいな理不尽ばかりだ。
更に何の解決策すら出されてない口だけの政治家?
そんなもん、国民なんて、あんまり?
どうでも良いな、うん。
誰が代表だの政治家になろうと、結局は変わらん現実。
何も助けずに、結局は金は取る?
取られた金はどこに?
こっちは、殆どないだろ?
それでも、お役所仕事のように時間だけ使うが?
そんな時間がかかれば全てが遅い!!」
私は少し息を吐いて、目を開けた。
私は晋作を見る。
もう何も言えない状態までになっていた。
「海外移住…
それだけの…
問題ばかり…」
私が晋作を見る。
考えてる様子だった。
「まぁ、別に。
晋作が気にする事でもないがな?
そんな人達も多く居ると、言うだけだ。」
晋作はどうにか首を横に振った。
「彩香が…
海外まで行ってなくて…
本当に良かったが…
でも、そんな、事まで…」
「こんなん普通だな?
私は晋作が居るからだが。
それでここに居られるだけだろ?
だから、晋作は気にするな。
最初に言ったな?
でも、私ぐらいでもかなりマシだ。
まぁ、私の場合、自業自得だがな?
人によっては『過労死』する世の中だぞ?」
その時だった。
晋作が急に抱き締めてきた。
**************************
うん?
「どうした?
晋作?」
「いや…
彩香が、居なくなるのは…
そんな、危ないとこにすら、俺はずっと…」
あぁ、少し、いきなり言い過ぎたのか?
でも、晋作は…
この体勢だと顔が見えないが…
「大丈夫だ、晋作?
気にするな!!
私は今、ここに居るだろ?
それにまぁ、いきなりだったが。
私は無事だしなぁ。
晋作は何も悪くないぞ!!」
晋作の抱き締めてくる力が強くなる。
「だが…
それを『知ってる』と言う事は…
彩香だって、そういう場所に、ずっと居たのだろう?
でなければ…
知らないのだから…」
「まぁ…
そうはなるか?
だけどなぁ、私はまた学べたから、別に?
私は恵まれてるのが、判るだけだなぁ。」
「彩香の事だ…
それでも『無理』をしてたぐらいなら…
俺にも判る…」
「あぁ、いや?
仕事は安いが『無理』は、あんまり?
私はしてないぞ?
楽な仕事を選べば、金が安いのは当たり前だからなぁ。」
「俺は彩香には、もう働かせたくない…
また彩香が傷付くのは…」
「晋作、私がした事だ。
晋作は何も気にするな。
私はそれでも、晋作を『願ってた』のは変わらないんだ。
今もまぁ…
『願って』はいるがなぁ。」
晋作の抱き締めてくる力がまた強くなる。
「晋作?」
「彩香も…
『幸せ』になるべきなんだ。
それなのに…
俺はずっと、『彩香が幸せ』にならないなら…
『俺が幸せ』なんか…
そんなものは、間違えてる。
俺の幸せを願うなら、彩香も幸せになるのを『願う』べきなんだ…
それなのに、彩香は…」
声だけだが…
これは…
「あぁ、私は今。
充分、幸せの中に居るぞ?
それは晋作のおかげだろう?
だから…」
「俺は、まだ、彩香が心配だ…
彩香は優し過ぎる…
『俺の事』すらもだ、それなのに…
彩香が、これ以上は…」
「私の心配か?
今は晋作が『一緒』に居るじゃないか。
それだって、『私の幸せ』だぞ?
その幸せをと、晋作がしてるぐらい、私も判るぞ?
なら、晋作も優しいだろう?」
抱き締めてくる力は変わらなかった。
**************************
私は少し考える。
「なぁ、晋作?
少し良いか?
話したい事がある。」
それに気付いた様子で、私をソッと、少し離すように。
晋作は私を両腕で腰に手をまわして支えてくる。
私はそこで晋作の顔を見る。
この顔は…
心配そうな顔か?
少し違うか?
私はゆっくりと、少し首を横に振る。
スッと、手で晋作の顔に触れて、少しだけ笑う。
「なぁ、晋作にはなぁ。
絶対に、これだけは忘れないで欲しいのもあるから。
今、伝えておくぞ?
私はな…
初めてなんだ。
他の誰でもない。
『晋作』だけだった事をだ。
それはなぁ。
私は初めて、『晋作』を愛したからでもあるが…
それからなぁ。
ずっと、今でも変わらないのがあるんだ。
それは私が離れてた時すら変わらなかった。
『晋作』の事だった。
どうしてもだった。
初めて、『本当に愛した』のは、『晋作』だけなんだ。
だから、最初、私は間違えたが…
私はなぁ。
離れててもだった。
最初に浮かんだ『答え』でもあったがな?
『本当に愛した人が、笑って幸せになってくれるなら』とだ。
私はその事を考えた。
その愛した人は『晋作』なんだ。
だから、晋作が嬉しそうに笑っていてくれる事を、ずっと『願って』いた。
今でもだ、晋作が嬉しそうに笑うのが、私には嬉しくて…
そんな晋作が、私を愛してくれてるなんて、充分に『幸せ』なんだ。
だからそんな顔は、しないでくれるか?
だから、もうこれは私からの『お願い』にもなるんだが…
晋作が苦しむ顔も、悲しむ顔も、悩むような顔も…
私は見たくない…
私のせいで、晋作が苦しむ姿も、辛そうにする姿は、見たくないんだ。
だから、晋作が嬉しそうに笑うだけで、それはもう『私は幸せ』なんだ。
私がそう、他の人すら少しは確かに考えたのも。
それは『晋作』をとだった。
でも…
私には愛せなかった。
だからすぐだった。
私はすぐに『一人』を選んだ…
その『一人』の間も、『願って』いたのはなぁ。
どうしても『晋作』の事だった。
せめて『晋作』が嬉しそうに笑っている事を、ずっと『願って』過ごした。
だから私はなぁ。
今はそう、こうして『二人』でだ。
こんな『幸せ』はないだろう?
だから、晋作が苦しむのも、悲しむのも、私は見たくない。
だから、これだけは覚えていてくれるか?
私に何かあっても、どんな時でもだが…
晋作が幸せそうに、笑っているのだけを祈るし、願ってると。」
私は晋作に軽いキスをした。
驚く顔をした晋作の顔だった。
また私は少し笑う。
「良いんだ、私は充分に『幸せ』だ。
だから、晋作がそんな苦しそうな声もだ。
後悔なんてしなくて良いんだ。
今ですら、晋作が笑うのならと、そして笑ってくれるのが、嬉しいんだ。
ずっと変わらなかったのも、それだけだ。
だからもう、そんな痛そうな顔も、苦しそうな声も、しなくて良い。」
私は晋作の顔を見た。
この顔はまた、複雑な顔だな?
晋作は首を振って、目を閉じた。
「彩香は…
俺は…
俺だって、『彩香』だけなんだ。
だから…
俺からも『お願い』を聞いてくれないか?」
「うん、なんだ?」
「俺が必ず、彩香を幸せにと。
そして、『俺の幸せ』が、『彩香の幸せ』だと言うなら。
彩香は、ずっと俺の側に居て欲しい。
『俺の幸せ』には、彩香が居なければ、絶対にない。
それは断言出来る事だ。
だから、『それを忘れずに、彩香も居て』欲しい。
どんな事があっても、俺は『彩香だけ』しか愛せないと。」
晋作はまた目を開けて笑う。
私は晋作が笑うのを見た。
だから、笑って言う。
「あぁ、判った。
晋作が笑うなら、私は幸せだ。」
スッと軽く晋作も私にキスをしてくる。
でも嬉しそうに笑った。
なら、私も嬉しいと。
だから笑う。
晋作は少し笑いながらだった。
「彩香は、本当に…
『俺の為に』と、いつもそう。
俺や『周りの為』にと動く。
更に『俺だけ』をと、願い続けると。
俺がしたことすらも、何でもないように言うがな?
でもそれは、普通は出来ないんだ。
彩香の凄いところでもあるんだがなぁ。
だから、俺は『彩香以外』に知らない。
それにもう、『彩香以外』、絶対に愛せないんだ。
もう一つだな。
俺はもう彩香を傷付かないようにと、守りたい。
彩香が笑うなら、俺はそう、必ずだ。」
私はまた笑う。
「あぁ、晋作が望むなら、私は嬉しいぞ!!
これからだって、そうだろう!!」
晋作は少し目を閉じる。
「俺は彩香に出会えた事すら、幸運なんだがなぁ。
でも、その彩香から。
愛された事すらも、今ですら、幸せな事なんだろうとすら、思えるなぁ。」
晋作は目を開けて、嬉しそうに笑う。
私もそれで、嬉しくなる。
だから、嬉しくて笑った。
**************************
それから『結婚』の話は出なくなったが…
それでも時々、晋作は何かを考える様子を見せる。
私が近付くと、とても嬉しそうに笑う。
それは私も嬉しいのだけれど。
仕事部屋でも普段よりは長くなった気もするのだが…
私はまた時々思い出す。
『俺の幸せには、彩香が居なければ、絶対にない。
それは断言出来る事だ。
だから、それを忘れずに、彩香も居て欲しい。』
そうは言うがなぁ?
でも、晋作?
私を選ぶだけが、幸せでもないだろう?
私の幸せをと、願ってくれるのは嬉しいがなぁ。
でも、それは晋作が幸せになる事なんだ。
その晋作が負担になるのであれば…
他の選択を選ぶのは、晋作の『自由』なんだぞ?
それなのに…
私は少し、時間と距離を考える。
なぁ、晋作?
私はもう充分だ。
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