『結婚』よりも先に『お願い』だ。

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『結婚』よりも先に『お願い』だ。

私は少し考える。 ふむ。 確かにお互い、同じなのも変わらん。 晋作(しんさく)が望めば、結婚をとは考えた。 でも晋作(しんさく)も私が望めば、結婚をにもなる。 だが… 『結婚』になれば… 必ず発生するのが『親類関係』だ。 どうするのが良いのか… 私の事を晋作(しんさく)は理解してくれるが。 そもそも、晋作(しんさく)の身内関係だって。 まぁ、知ってるだけに。 余計に悩むんだが… だがなぁ。 別に結婚以前に、既に一緒に住んでるし? 何も変わらんのだが… でもなぁ。 晋作(しんさく)は違うだろう? ************************** とある日。 主寝室のベッドで、晋作(しんさく)が、夜にだった。 相変わらず、私はいつも翻弄されてしまうのだが… 少し私が休んだ後だった。 「なぁ、彩香(さやか)は前に言っていたな? 俺が望まなければ、結婚もしないと。 でも俺もそうだろう? 彩香(さやか)が望まなければ、結婚すらしないと。 それは今と何も変わらないと思うんだが… 彩香(さやか)は何か考えてるのか?」 私はそれを聞いてだった。 少し考える。 確かにまぁ… そうなんだがなぁ。 「だが、晋作(しんさく)? 私と晋作(しんさく)での『同意』があれば可能だがなぁ。 私の方だったら、まぁ。 問題はないだろうが… 晋作(しんさく)の方を考えると…」 晋作(しんさく)は少し不思議そうに聞いてくる。 「俺か? 俺の方は何も問題はないと思うが? まぁ、俺の場合。 最初から『独身』も覚悟してるから。 別に問題は…」 私は首を横に振った。 「まぁ、私もそうだったから。 判らない訳でもないんだがなぁ? でもな、結婚になれば… 例え結婚式はしなくても良いとしてもだ。 親類になるだろう? そうなれば、晋作(しんさく)の両親だって。 関わってくる。 それは… 私と晋作(しんさく)が、いくら同意をしていてもだがな? 晋作(しんさく)の両親を考えると… 私では『反対』されるだろう事は、簡単に判るからなぁ。 当たり前だが…」 晋作(しんさく)の方がまた驚く様子だった。 「どうしてだ? 俺が選んでるのに、俺の両親の事は関係ないだろう?」 私は少し溜息を出した。 「いや、これは… 晋作(しんさく)に限らない問題なんだぞ?」 それで少し考える様子だったが、それでも不思議そうな顔でだった。 「俺に限らない? 誰でもあると?」 私は少し晋作(しんさく)を見る。 この顔は… 確かに判ってない顔だな。 「ふむ。 私が知った事実は多いが、ザックリと言うぞ? まぁ、私も流石に全部は判らんがなぁ。 でも大抵の親ってのは… 自分の『子供の幸せ』すらも、願うものが普通だろう。 だから、まぁ。 私との結婚は、反対される事は普通だろうな。 これはなぁ。 別に晋作(しんさく)に限らん。 私が知ってる中でも、どの人でも似たような『問題』は出てたからなぁ。 簡単に言えば、それはもう… 『子供や家庭』の事だ。 まぁ、都心に住んでる私達なんて、まだマシらしいが。 田舎の方だと更に厳しいらしいからな? 『独身』が問題じゃない。 田舎の場合、話でも良く聞いたが。 結局はまぁ、跡継ぎの事があるからだろう。 家を守る上で、田舎ではそれが今だに大きいらしいからな。 私も上京してか? それでも、どうにか生活してる人達ですらだったが… それを聞いた時は私すら驚いたんだがな。 結婚の認識が未だに古過ぎる。 更に家同士の繋がりだろうなぁ。 それがかなり強いから、この都心での生活に苦しくてもだ。 まぁ、実家に戻りたがらない人すらも結構居たからな? 確かに都心で『独身』は通用するが、田舎では通用すらしないと。 それをいろんな話を聞いた時は、私すらも驚いたが…」 「彩香(さやか)ですらも、驚くぐらいだったのか? そんなにか? 俺の周りにだって『独身』は半数以上いるが?」 「あぁ、私もそれはそうだな。 晋作(しんさく)の感覚には似てるだろう。 だが、まぁ、田舎の縛り? みたいなのは、未だに根強いらしい。 そんな話を聞いてると。 結局は『家庭』よりも、『子供』だろう。 まぁ、『子孫』を残す為にとの結婚の認識が強いんだろうがな? それには否定はしないが… 後、晋作(しんさく)の場合だがなぁ。 両親の話は少し聞いた事があるが… まぁ、私は『反対』されるだろうな。 それぐらいは私の方が判りそうな気がする。」 晋作(しんさく)も少し考えてる様子だったが、聞いてくる。 「俺の両親は反対しないと思うが? どうしてそう思うんだ?」 私は晋作(しんさく)に聞いた。 「両親の職業は?」 晋作(しんさく)は不思議そうにだが答える。 「外務省だが…」 私は若干、溜息を出した。 「それなぁ… まぁ、多分だが。 晋作(しんさく)がまぁ。 規格外なのは置いててもだ。 きっとだが、『孫』を期待されてるだろ?」 晋作(しんさく)が若干、驚く様子だった。 やっぱりかと、私は内心思う。 「いや、私は別に良い。 これは『自業自得』だからな? でもそんな親のところで、私の場合。 まぁ、確実に『反対』だろうからなぁ。 特に晋作(しんさく)は、一人息子だ。 尚更、それが普通だろう。 だったら…」 そうだな。 どうしても、そう。 私ではない人の方が… 晋作(しんさく)には… 「彩香(さやか)? 今、また考えてるだろ!? それなら、また俺が止めるだけだぞ?」 私は首を横に振った。 「まぁ、確かに少しは考えた事は認めるが。 だからこそ、私が動いたのもあるが… でもこれは晋作(しんさく)に限らんからな? だから晋作(しんさく)が気にする事もない。 私の問題だ。」 それに晋作(しんさく)がすぐ私に言った。 「違う!? 俺が悪いんだと、言ってるだろう!? 彩香(さやか)は悪くないと!!」 私はでも首を横に振った。 判るからこそ、もう普通と言った。 「晋作(しんさく)… これはもう、どちらがとかは。 もう関係ないと、気付いてないだろう?」 「何?」 「つまりだな? 親類関係になればだ。 『こちらの事情』なんて。 周りからは配慮されん事だ。 まぁ… 稀に駆け落ちぐらいが限界だろうか? でも、そんな事をしたって、当人同士だけ。 それですら周りの親類関係、全てを巻き込むからな? 下手したら、警察沙汰にもなる。」 晋作(しんさく)は驚く様子をした。 私はそれでも、軽く見ただけで、視線だけ外して普通に言った。 「そういう事だ。 世間でも、まぁ、それが『普通』だからな。 どんなに『自由』になりたくても。 流石に全て、親類が居ない人は。 最近だと、多々居るだろうが… それでも『戸籍』を警察が調べて、遠縁やら、縁者をと探し出して動く。 それすらも『相続』に関してなら、もう… 拒否や放棄か? そうする人も多いからなぁ。」 「放棄だと?」 晋作(しんさく)はまた疑問なのか不思議に聞いてくる。 私はまた簡単に言った。 「そりゃ、そうだろう? ほぼ全く関わりのない人、遠縁。 縁者になれば、それでいきなり『遺産相続』までになればなぁ。 相続税だの、余計な事から避けたがるだけだ。 まぁ、つまり、余計に『金がかかる』って事だけだからな。 判り易く言うなら、私が『毎月3万』程度の食費。 その中で出来る貯金なんて、少ないだろう? それが普通の人達からしてみろ? 相続税なんて、払えんからな。 放棄しなければ、もう… 『自己破産』だな? そんな事は、本末転倒だろうから、誰だって避けるだけだな、うん。」 晋作(しんさく)がまた動揺する。 「自己破産だと… 遺産相続でか?」 「当たり前だ。 その分の税金が払えんし? それで自己破産して、最悪は生活保護か? そうでもしないと、食べれんから。 死ぬだけだぞ? そんな事、誰だって避けるからなぁ。 私でもまぁ、それは判らんでもないか? 私なんて、まだ3万程度だが。 それより少ない人なんて、多過ぎるからなぁ… まぁ、確かに日本は無駄に税金が高い割に? あんまり、政治家関係ってのは、一般人の生活なんて、知らんから。 何も改善されんだろうなぁ。 一部の人達との格差が出るだけか? 私がしてたバイトでも、今の若い世代もだな。 『海外』すら検討する子も居たぞ? バイトで貯金をして、これは『事前準備』だろうな。 それぐらい、『今の日本』はあまり? 若者の方が負担が大きいぐらいか? それを政治家とかは気付いてるのに、変える動きすら、あんまり見せんし? そんな若者達からしたら… だったら、『他の国』にって発想は、私も判らなくもなかったなぁ。」 「それは… 本当か!? そんなにか!?」 私は晋作(しんさく)を見る。 もう動揺どころでもなく、完全に困惑してるのが判る。 思わず笑った。 「あははは!! 晋作(しんさく)はまぁ、信じられんだろうが。 でも事実だな、これ。 あははは!! まぁ、私も判らんでもないか? 大体なぁ、NHKだってそうだな? 私もあれは、確かに『理不尽』なもんだと。 思ったしな、判るな、うん。」 「理不尽?」 不思議そうな顔の晋作(しんさく)を見た。 私は考える。 私は晋作(しんさく)と目が合う。 ふむ、私は考え、目を閉じる。 「なるほど、晋作(しんさく)。 知らないだろうが。 もう最低限生活で知った私は、今から一方的にだが? 晋作(しんさく)にじゃないぞ? これは一人愚痴りだな? うん、もう、私すらもその『理不尽』だな。 そりゃそうだろって思う事は多かったぞ? 例えばテレビな? 全く見てもいない。 ただ、家電があるだけ。 ましては、NHKなんて、尚更? 一回も見てもいないのにだぞ? 使ってもいないのにだぞ? それなのに、何なんだ? 国民の義務としてか? 強制的に金を請求されるんだぞ? まぁ、安いとは言えなぁ。 それが普段から僅かな少ない安い生活費からだ。 更にもし、私よりも低い生活費。 3万以下の人達からしてみろ? そんな僅かな食費からだ。 どれだけ勝手に、税金としてか? 何で強引に金は取られるんだ? もう、おにぎり1個すら食えんぞ? 使ってもいないのに、金を取られる? 食事すらも出来なくなるが。 そんなのすら、一切、関係なしにだぞ? まぁ、これで使ってるのに金がかかるなら。 それは普通に、皆が払うだろうがなぁ。 誰も文句は言わん。 でも、使ってもいないのに金だけ取られる… あんな『理不尽』が普通にあるからなぁ。 正社員ならでもマシだが。 私がバイトしてるだけの時にもだがそう。 他の若い子とかでも、フリーターとかだと。 年金すら払ってない子も多いか? そりゃ、そうだなと思ったな、うん。 毎月3万あったとしてだ。 その中の半分以上が、年金? そりゃ、払わんだろうな。 そんな40年以上先の為よりも、今生きる為の食事優先だろ… と、まぁ、他にも色々とあり過ぎるぞ? 『日本以外』を考える発想も普通に出ても? 私は不思議でも、何でもないって知った。 本当に思うな、あれは。 そんな若い人達だが? こんな日本に? 更に結婚? 子育て? いくら金がかかる? それなのに、働けばその分、更に税金だけは高くなるばかり。 こんなんじゃ、いくら働いても生活苦だろ。 だからもう、皆が避けて『独身』だ。 そして出たのが少子化? 更に高齢化社会? もう、当たり前だとな。 そもそも、子育ての為の金が使いたくても。 最初から国が金取るだろ。 だったら、子供を産める人達だって。 『独身』を選ぶ。 そんな世の中なのに、少子化問題なんて。 何にも? 対策なんてしてても手遅れ、対処しても既に遅すぎるから、また別問題だ。 だったらもう、そんな選択。 しない人が増えるに決まってるだけな。 確かにそんな日本に? 私も若干、国外は考えたがなぁ。 だが、そもそも、貯金もないしな? うん、まぁ、あれじゃ出来ないし? ある意味、今じゃ無理なだけか。 だから若い人でも、それすら最初から考えて。 バイトで貯金か? それにはまぁ、なるほどと思ったぞ? 私も貯金しとけばと考えたぐらいか? ちゃんと考えて、計画的にしてる若者だって居るしなぁ。 そうだな、うん。 他のバイトやら、他の会社でも普通に? 色々聞くぞ? バイトの学生さん達すらなぁ。 親が学費を払えないからと、必死にバイトしてか? 自分で頑張って更に? おまけになんだ? あの奨学金制度? そりゃ、それを使えば学費として学校は行けるが? それすら結局、国との借金だな。 で、いざ働き出したら、新卒の安い給料からか。 その中から、国が借金の請求か? そんなんだったら、払えなくもなるだろ!! だったらもう、あんなんだったら、就職の方がまだマシだろ!? 学歴でしか残らない、それすらどうにかして就職できても? どれだろうが最初は高い筈もない給料から国が借金請求か? 何にもならんな。 国からくる借金なら払わないといけないなら、余計にまた金取られるから? また更に働きながらも副業か? そんなんなら、奨学金制度なんて意味ないだろ!! 確かに、日本は『お先真っ暗』? それは良く聞く事だな。 当たり前か? そもそも、国民の苦労すら知らない政治家が? 出来る訳ないな、うん。 更に会社により、サービス残業すら、金出さない会社すら多いし? ブラック企業だろ。 自営業なら365日、働きっぱなし? それすら、ろくな贅沢すら出来ない生活。 そんな中で? 今なら学歴だけでの就職すら困難だし? 大抵がどうにか生活出来るレベル? まぁ、確かに、皆が嫌がるよなぁと。 言ってる意味は理解したな? おまけに何だ? 悪徳詐欺すら、善人を騙して金を奪って詐欺か? 振り込み詐欺なんか良く聞くし? あんなん警察との、いたちごっこだな。 被害にあわないように、自分の身は自分で守るのも当たり前だな。 都心じゃ毎日のように、判らん事件ばかり。 警察すら、事件が発生してからじゃなきゃ動かんし? 後から警察が動いても遅過ぎて、それすら何にも意味ないだろ!! そんなこんな日常や将来なんかに絶望して、今の日本じゃ、『自殺者』すら増えてくばかり。 まぁ、そうだよな? 大小関係なし、勿論理由も様々だがなぁ。 更に遺族には慰るよりも賠償金か? でもこんな状態で、それすら何にも解決策すらもなくか? その上に更に子供への育児での虐待で逮捕? 更に通り魔の無差別殺戮? ずっと続く裁判してる間に別の問題で、アッサリとそれすらなくなる。 キリがないな、もう世の中おかしい、うん。 そりゃ、判らなくもないか? やってられないと投げ出しても、仕方がないぐらいな理不尽ばかりだ。 更に何の解決策すら出されてない口だけの政治家? そんなもん、国民なんて、あんまり? どうでも良いな、うん。 誰が代表だの政治家になろうと、結局は変わらん現実。 何も助けずに、結局は金は取る? 取られた金はどこに? こっちは、殆どないだろ? それでも、お役所仕事のように時間だけ使うが? そんな時間がかかれば全てが遅い!!」 私は少し息を吐いて、目を開けた。 私は晋作(しんさく)を見る。 もう何も言えない状態までになっていた。 「海外移住… それだけの… 問題ばかり…」 私が晋作(しんさく)を見る。 考えてる様子だった。 「まぁ、別に。 晋作(しんさく)が気にする事でもないがな? そんな人達も多く居ると、言うだけだ。」 晋作(しんさく)はどうにか首を横に振った。 「彩香(さやか)が… 海外まで行ってなくて… 本当に良かったが… でも、そんな、事まで…」 「こんなん普通だな? 私は晋作(しんさく)が居るからだが。 それでここに居られるだけだろ? だから、晋作(しんさく)は気にするな。 最初に言ったな? でも、私ぐらいでもかなりマシだ。 まぁ、私の場合、自業自得だがな? 人によっては『過労死』する世の中だぞ?」 その時だった。 晋作(しんさく)が急に抱き締めてきた。 ************************** うん? 「どうした? 晋作(しんさく)?」 「いや… 彩香(さやか)が、居なくなるのは… そんな、危ないとこにすら、俺はずっと…」 あぁ、少し、いきなり言い過ぎたのか? でも、晋作(しんさく)は… この体勢だと顔が見えないが… 「大丈夫だ、晋作(しんさく)? 気にするな!! 私は今、ここに居るだろ? それにまぁ、いきなりだったが。 私は無事だしなぁ。 晋作(しんさく)は何も悪くないぞ!!」 晋作(しんさく)の抱き締めてくる力が強くなる。 「だが… それを『知ってる』と言う事は… 彩香(さやか)だって、そういう場所に、ずっと居たのだろう? でなければ… 知らないのだから…」 「まぁ… そうはなるか? だけどなぁ、私はまた学べたから、別に? 私は恵まれてるのが、判るだけだなぁ。」 「彩香(さやか)の事だ… それでも『無理』をしてたぐらいなら… 俺にも判る…」 「あぁ、いや? 仕事は安いが『無理』は、あんまり? 私はしてないぞ? 楽な仕事を選べば、金が安いのは当たり前だからなぁ。」 「俺は彩香(さやか)には、もう働かせたくない… また彩香(さやか)が傷付くのは…」 「晋作(しんさく)、私がした事だ。 晋作(しんさく)は何も気にするな。 私はそれでも、晋作(しんさく)を『願ってた』のは変わらないんだ。 今もまぁ… 『願って』はいるがなぁ。」 晋作(しんさく)の抱き締めてくる力がまた強くなる。 「晋作(しんさく)?」 「彩香(さやか)も… 『幸せ』になるべきなんだ。 それなのに… 俺はずっと、『彩香(さやか)が幸せ』にならないなら… 『俺が幸せ』なんか… そんなものは、間違えてる。 俺の幸せを願うなら、彩香(さやか)も幸せになるのを『願う』べきなんだ… それなのに、彩香(さやか)は…」 声だけだが… これは… 「あぁ、私は今。 充分、幸せの中に居るぞ? それは晋作(しんさく)のおかげだろう? だから…」 「俺は、まだ、彩香(さやか)が心配だ… 彩香(さやか)は優し過ぎる… 『俺の事』すらもだ、それなのに… 彩香(さやか)が、これ以上は…」 「私の心配か? 今は晋作(しんさく)が『一緒』に居るじゃないか。 それだって、『私の幸せ』だぞ? その幸せをと、晋作(しんさく)がしてるぐらい、私も判るぞ? なら、晋作(しんさく)も優しいだろう?」 抱き締めてくる力は変わらなかった。 ************************** 私は少し考える。 「なぁ、晋作(しんさく)? 少し良いか? 話したい事がある。」 それに気付いた様子で、私をソッと、少し離すように。 晋作(しんさく)は私を両腕で腰に手をまわして支えてくる。 私はそこで晋作(しんさく)の顔を見る。 この顔は… 心配そうな顔か? 少し違うか? 私はゆっくりと、少し首を横に振る。 スッと、手で晋作(しんさく)の顔に触れて、少しだけ笑う。 「なぁ、晋作(しんさく)にはなぁ。 絶対に、これだけは忘れないで欲しいのもあるから。 今、伝えておくぞ? 私はな… 初めてなんだ。 他の誰でもない。 『晋作(しんさく)』だけだった事をだ。 それはなぁ。 私は初めて、『晋作(しんさく)』を愛したからでもあるが… それからなぁ。 ずっと、今でも変わらないのがあるんだ。 それは私が離れてた時すら変わらなかった。 『晋作(しんさく)』の事だった。 どうしてもだった。 初めて、『本当に愛した』のは、『晋作(しんさく)』だけなんだ。 だから、最初、私は間違えたが… 私はなぁ。 離れててもだった。 最初に浮かんだ『答え』でもあったがな? 『本当に愛した人が、笑って幸せになってくれるなら』とだ。 私はその事を考えた。 その愛した人は『晋作(しんさく)』なんだ。 だから、晋作(しんさく)が嬉しそうに笑っていてくれる事を、ずっと『願って』いた。 今でもだ、晋作(しんさく)が嬉しそうに笑うのが、私には嬉しくて… そんな晋作(しんさく)が、私を愛してくれてるなんて、充分に『幸せ』なんだ。 だからそんな顔は、しないでくれるか? だから、もうこれは私からの『お願い』にもなるんだが… 晋作(しんさく)が苦しむ顔も、悲しむ顔も、悩むような顔も… 私は見たくない… 私のせいで、晋作(しんさく)が苦しむ姿も、辛そうにする姿は、見たくないんだ。 だから、晋作(しんさく)が嬉しそうに笑うだけで、それはもう『私は幸せ』なんだ。 私がそう、他の人すら少しは確かに考えたのも。 それは『晋作(しんさく)』をとだった。 でも… 私には愛せなかった。 だからすぐだった。 私はすぐに『一人』を選んだ… その『一人』の間も、『願って』いたのはなぁ。 どうしても『晋作(しんさく)』の事だった。 せめて『晋作(しんさく)』が嬉しそうに笑っている事を、ずっと『願って』過ごした。 だから私はなぁ。 今はそう、こうして『二人』でだ。 こんな『幸せ』はないだろう? だから、晋作(しんさく)が苦しむのも、悲しむのも、私は見たくない。 だから、これだけは覚えていてくれるか? 私に何かあっても、どんな時でもだが… 晋作(しんさく)が幸せそうに、笑っているのだけを祈るし、願ってると。」 私は晋作(しんさく)に軽いキスをした。 驚く顔をした晋作(しんさく)の顔だった。 また私は少し笑う。 「良いんだ、私は充分に『幸せ』だ。 だから、晋作(しんさく)がそんな苦しそうな声もだ。 後悔なんてしなくて良いんだ。 今ですら、晋作(しんさく)が笑うのならと、そして笑ってくれるのが、嬉しいんだ。 ずっと変わらなかったのも、それだけだ。 だからもう、そんな痛そうな顔も、苦しそうな声も、しなくて良い。」 私は晋作(しんさく)の顔を見た。 この顔はまた、複雑な顔だな? 晋作(しんさく)は首を振って、目を閉じた。 「彩香(さやか)は… 俺は… 俺だって、『彩香(さやか)』だけなんだ。 だから… 俺からも『お願い』を聞いてくれないか?」 「うん、なんだ?」 「俺が必ず、彩香(さやか)を幸せにと。 そして、『俺の幸せ』が、『彩香(さやか)の幸せ』だと言うなら。 彩香(さやか)は、ずっと俺の側に居て欲しい。 『俺の幸せ』には、彩香(さやか)が居なければ、絶対にない。 それは断言出来る事だ。 だから、『それを忘れずに、彩香(さやか)も居て』欲しい。 どんな事があっても、俺は『彩香(さやか)だけ』しか愛せないと。」 晋作(しんさく)はまた目を開けて笑う。 私は晋作(しんさく)が笑うのを見た。 だから、笑って言う。 「あぁ、判った。 晋作(しんさく)が笑うなら、私は幸せだ。」 スッと軽く晋作(しんさく)も私にキスをしてくる。 でも嬉しそうに笑った。 なら、私も嬉しいと。 だから笑う。 晋作(しんさく)は少し笑いながらだった。 「彩香(さやか)は、本当に… 『俺の為に』と、いつもそう。 俺や『周りの為』にと動く。 更に『俺だけ』をと、願い続けると。 俺がしたことすらも、何でもないように言うがな? でもそれは、普通は出来ないんだ。 彩香(さやか)の凄いところでもあるんだがなぁ。 だから、俺は『彩香(さやか)以外』に知らない。 それにもう、『彩香(さやか)以外』、絶対に愛せないんだ。 もう一つだな。 俺はもう彩香(さやか)を傷付かないようにと、守りたい。 彩香(さやか)が笑うなら、俺はそう、必ずだ。」 私はまた笑う。 「あぁ、晋作(しんさく)が望むなら、私は嬉しいぞ!! これからだって、そうだろう!!」 晋作(しんさく)は少し目を閉じる。 「俺は彩香(さやか)に出会えた事すら、幸運なんだがなぁ。 でも、その彩香(さやか)から。 愛された事すらも、今ですら、幸せな事なんだろうとすら、思えるなぁ。」 晋作(しんさく)は目を開けて、嬉しそうに笑う。 私もそれで、嬉しくなる。 だから、嬉しくて笑った。 ************************** それから『結婚』の話は出なくなったが… それでも時々、晋作(しんさく)は何かを考える様子を見せる。 私が近付くと、とても嬉しそうに笑う。 それは私も嬉しいのだけれど。 仕事部屋でも普段よりは長くなった気もするのだが… 私はまた時々思い出す。 『俺の幸せには、彩香(さやか)が居なければ、絶対にない。 それは断言出来る事だ。 だから、それを忘れずに、彩香(さやか)も居て欲しい。』 そうは言うがなぁ? でも、晋作(しんさく)? 私を選ぶだけが、幸せでもないだろう? 私の幸せをと、願ってくれるのは嬉しいがなぁ。 でも、それは晋作(しんさく)が幸せになる事なんだ。 その晋作(しんさく)が負担になるのであれば… 他の選択を選ぶのは、晋作(しんさく)の『自由』なんだぞ? それなのに… 私は少し、時間と距離を考える。 なぁ、晋作(しんさく)? 私はもう充分だ。
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