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考える為に『時間』と、与えるのは『安心』だ。
最近、何やら…
晋作の様子が変だな?
時々、何か考える様子を見かけるし…
何かあったのか?
普通に言うんだが、どうも違和感か?
『特に何も心配ないぞ!!』
そう笑って言ってた晋作だが…
私は考える。
ふむ。
可能性はあるよなぁ。
あの晋作だぞ?
仕事では苦労しないだろうが…
まぁ、多分。
また『言われてる』ぐらいか?
予測しか出来ないが。
でも私は充分、幸せだしなぁ。
また元に戻っても、晋作が笑うなら…
『俺の幸せには、彩香が居なければ、絶対にない。
それは断言出来る事だ。
だから、それを忘れずに、彩香も居て欲しい。』
私は思い出す。
だがなぁ。
忘れはしないが、その『選択』を。
晋作は『後悔』するのではないか?
私は頭から振り払う。
私はもう、望んだら、いけない。
**************************
とある日。
私はいつもと変わらずに家事を終わらせる。
ふむ。
今頃、晋作は…
私はリビングの方へ行った。
居ないな?
だから私はまた主寝室の方へ行った。
居た。
また携帯か?
仕事か?
ふむ。
私は少し晋作の側に近付くと気付いた様子だった。
側に携帯を置いて、私の方に笑う。
「もう終わったのか?
そんなに急ぐ事もないぞ?」
私も少し笑う。
この顔は笑ってるが…
私は少し考える。
「なぁ、晋作?
私はちょっと外出したいんだが…
まぁ、少ししたらまた戻ってくるし?
私の携帯は知ってるよな?」
晋作は少し驚く顔をしてだった。
「どこに…
外出したいと?
そう言うなら、行き先は決まってるのだろう?」
私は少し考える。
「井の頭公園だ。
そこで少し、散策してくる。」
私はそれを言ってから、すぐに移動を自室の方へと向かおうとした。
「さ、彩香!?
待て、だったら俺も一緒に行くぞ?」
私は少し振り返る。
晋作の顔を見る。
それは…
また心配か?
私は首を横に振って笑う。
「晋作、大丈夫だ。
戻ってくるし、そんなに時間はかからない。
そうだな…
晋作が仕事中に、勝手に居なくなる方が。
心配するだろ?
だったら、ちゃんと言ってからと思っただけだ。
その間は、普段から大変だろうが、晋作も休んだ方が良いからな!!」
私はそう言ってから、自室の方にとまた行こうとする。
けれど、晋作の方が腕を掴んで止めた。
私は少し焦る様子の顔をした晋作を見た。
「彩香?
何を考えてる!?
今まで、そんな行動すらしなかったのにか!?」
私は少し笑う。
「大した事じゃない。
普段から忙しい晋作の邪魔はしたくないだけだ。
それに連絡先も知ってるし、行き先も言ってる。
別に仕事でもないからな、私には『無理』はないぞ?」
「だが…
いつもと様子が…」
私は少し、首を傾げた。
いつもと違うのは…
晋作だと思うが…
それに晋作はさっき笑ってたが。
それは…
「大丈夫だ、晋作。
私は消えたりはしない。
それにまぁ、意外と面白いものだぞ?
人間観察ってのもなぁ。
人の事が良く判るようにもなるからな。
だから公園に行くだけだ。」
「でもそれは…」
私はスッと手を晋作の頬に触れる。
少し笑う。
「晋作の方がだぞ?」
「俺?」
「あぁ、確かに笑うけれど。
その笑顔は違うぐらい。
私には判る。」
晋作は若干、動揺した様子を私は見た。
私は少し笑って言った。
「晋作も何か考えているのだろう?
いつも、一緒なのは変わらないがなぁ。
でも、今はそうだな。
晋作も少し、考える時間が必要だろう。
それに私の行く場所も、戻ってくる場所も。
晋作には、ちゃんと言ったぞ?」
晋作は若干、動揺を隠せずにだった。
首を横に振った。
「だが、今の彩香だって笑ってないだろう?
何を考えると?」
ふむ。
そうだな…
私はでも笑って言った。
「私が考える事はいつも一つだけだ。
晋作の事だけだな。
だから、少し外出するだけだ。
もし、今、止めれば…
晋作が仕事中に行くが?」
晋作はまだ驚く顔をする。
「それは…」
私は笑う。
「公園に行くぐらいなら、問題ないからな?
ちゃんと戻ってくる。」
私はそのまま、自室で簡単に着替えると、久々に一人で外出した。
**************************
電車に久々に乗ったなぁ。
さて、実際着いた、井の頭公園か。
今日は平日だし、人も少ない事もあるが…
それでも多いのが、まぁ、この場所は人口も多いから当たり前か?
私は取り敢えず、フラフラと特に目的もなく歩く。
やっぱりカップルが多いな。
まぁ、当たり前か?
スタバで飲み物だけを買って、また歩く。
取り敢えず空いてるベンチを探して座る。
まぁ、昔から『人間観察』は嫌いではないが…
さて、どうしたものかなぁ。
晋作には、私の気持ちは言ったが。
そのせいもあって、無理にでも隠そうとするか…
それは逆だろう?
私が前にしていたのと同じだが。
晋作は気付いてない様子だな?
ふむ。
私は指輪を見る。
あの時の嬉しそうな笑顔が浮かぶ。
私が言わない方が良かったか?
だがなぁ。
ずっと晋作の中には。
あの10年前の事をだ。
ずっとまだ心にある。
それをどうするのが一番だろうか?
今だって、本来であれば…
あの時に欠員が出たからこそ。
私を見つけたと言っていたな?
確かにあれだけ、ずっと探していたと知った時は。
私の失敗だと、大きく思ったが…
せめて、一旦、置くのではなく。
消える前に話すべきだっただろう。
そのせいで結局、晋作は…
私に捕らわれてないか?
別に私の幸せは…
『晋作が幸せ』になる事に変わらないんだが。
だがなぁ。
『俺の幸せには、彩香が居なければ、絶対にない。
それは断言出来る事だ。
だから、それを忘れずに、彩香も居て欲しい。』
忘れたりはしないがな?
それは嬉しい言葉なのもそうだ。
けれど、それはな…
『私』でなくても、叶う事だと。
判ってるのか?
確かに『彩香』の部分をだがなぁ。
それを他の人に置き換えれてしまえば。
アッサリと解決するんだぞ?
まして、晋作の場合は尚更だろう。
『孫』を望まれてる上に、晋作の身内はまぁ。
晋作が『規格外』なのは充分判るが。
そもそも、晋作の身内が全て『規格外』か?
だから気付かないんだろうが…
私も気付いていないらしいし。
それに気付かない事は、別に?
何も問題にすらなってないな?
私は行き交う人達を見た。
皆が楽しそうに笑ってるな。
それは良いことだ。
いきなり、晋作の前から消える事はしないがなぁ。
前の失敗でもある。
それを前提に、どうするかだが…
私はまた指輪を見る。
少し笑う。
あの時、本当に嬉しそうだったなぁ。
あの買い物も、晋作らしいと言えば?
晋作らしいが…
でも、そうやって笑っていて欲しいが。
それはもう、長くしない方が。
晋作の為になるか?
でも急には無理だな。
あの晋作の苦しそうな声。
あれは私のせいだろう。
だったら、尚更、同じ失敗は出来ないか。
誰か代わりを…
私は自然に涙が零れた。
咄嗟に気付いて、すぐに拭く。
いけない!!
こんな場所だと余計にだ!!
「ねぇ、お姉さん。
泣いてるなら、これを使って?」
**************************
私は驚いて、すぐに見ると知らない男性だった。
私は首を横に振った。
「さっきから、見てたんだけど。
かなり考え込んでるみたいだったし?
だから声はかけなかったんだけど。
でもねぇ、流石に泣かれたら…
放置は出来ないでしょ?」
私は動揺してその男性を見る。
私より、少し下ぐらいだろうか?
でも、それは受け取れない。
「いえ、結構です。
ただ、気持ちは…
嬉しいですが…」
私はすぐに涙を拭って、立ち去ろうとした。
「もしかして、ナンパかと思われちゃったかな?
別に携帯番号だの、何だの聞かないよ?
俺もまぁ、一人でフラフラしてただけだし?
どうせ少ししか居ないなら、俺の愚痴ぐらい聞いてくれない?」
うん?
愚痴?
ナンパでもなかったのか?
私は不思議に思って、またその男性を見た。
そうすると、男性は自然と笑ってた。
私は首を傾げた。
「愚痴を?」
その男性はまた笑った。
「そっちには反応するの?
ハンカチは断ったのに…
そうだなぁ、お姉さんの愚痴?
いや、泣いていた悩み?
どうせもう会わないんだから、言っちゃえば?」
私は考える。
「でも、もう会わないか、判らないでしょう?
だったら、それは出来ない。
でも…
貴方には、愚痴があるの?」
その男性はまた驚いた様子になったのを見た。
けれどまたすぐに笑った。
「あはは!!
お姉さん、面白いな!!
泣いてたのはお姉さんなのに?
それなのに、自分よりも、俺の方?
まぁ、愚痴って言えば、愚痴だけど。
大した事でもないよ。
でもまぁ、俺が今、笑えるのも、お姉さんのおかげかな?
あはは!!」
うん?
私が変な事でも言ったかな?
凄く楽しそうに笑うが…
私が不思議に見てると、その男性が笑いを抑えて言った。
「あぁ、なるほどね。
そうだなぁ。
まぁ、ちょっと今だけだから。
俺の名前も、お姉さんの名前も聞かないし?
それに連絡先だって聞かない。
たまたま通りかかった人って感じだから?
通りすがりのAさんぐらいで俺を認識してれば良いかな?
お姉さんのどのアルファベットを選ぶ?」
私はそれで考える。
「なら『S』かな?
通りすがりのAさんは…
若干、安易過ぎる気もするけれど…」
「あははは!!
まぁ、そうか?
でも俺の名前のアルファベットだから。
そこは許してよ?
でもまぁ、どうせ俺も暇だしね。
愚痴ってのはまぁ、彼女の事。
俺が失敗してフラれただけだなぁ。
だから、単純に今日は気分転換中だったら。
Sさんを見かけただけ。
そしたら、何やら考えてるし?
その上、泣いちゃうし?
ちょっとね?
それにSさんも、彼氏さんの事でしょ?」
私は動揺した。
「何で…」
「あははは!!
だって指輪、してるじゃない?
って事は、彼氏さんが居るでしょ?
それなのに一人だ。
答えは簡単でしょ?」
私はまた動揺した。
でもそうか。
確かに指輪が有る無しでまた変わるのも判るし。
そもそも、晋作がその為に買ったけれど。
あったから、声をかけなかった。
でも、私が泣いたから、声をかけてきた?
「まぁ…
それは、そうだけど…
良くそこまですぐに?」
Aさんはまた笑った。
「そりゃ、Sさんは目立つでしょ。
そんな服装だって、そうだし?
その指輪だって、かなり高い筈だ。
それだけで充分だったけどね?
Sさんがお金持ちか、彼氏さんがお金持ちなだけだと。
すぐに判る事でしょ?」
私はまた驚いた。
言われてしまえば、その通りだろう。
確かに晋作がそもそも『規格外』だから。
単純にそうなる。
「Aさんは…
良く、見てるんだね。」
「まぁね、人間観察してれば。
簡単だからねぇ。
でも、Sさんは、どうも観察してる様子は最初してたけれど。
今度は何やら悩み出すし?
その上に泣かれちゃうし?
俺は少し迷ったけどねぇ。
それに警戒心もありそうだ。
だから俺からは一歩も近付いてないでしょ?
まぁ、ハンカチは断られたけれど。
それでも、愚痴は聞いてくれるらしいのには。
俺でも予想外な反応だったけど。」
どうやら…
確かに悪い人でもない様子であるが…
晋作が嫌がりそうだし。
近付くのは出来ないか…
「別に、近付いて来ないなら。
問題ないけれど…
でも、そんなに時間もないから…」
Aさんは笑って言った。
「あぁ、彼氏さんを気にしたのか。
まぁ、そうなるだろうねぇ。
良いよ、俺からは一切、近付かない。
時間もないなら、10分にしよう。
それならどう?」
10分…
まぁ、でも、確かに歩いて考えてるだけでも。
それはそのぐらい?
私は首を傾げる。
「10分だけだったら。
その場から動かないなら…
問題ないのかな?
でも、それでも…」
私は指輪を見る。
晋作は嫌うのでは?
どうなんだろう?
この人、悪い人には見えないけれど。
「なるほど。
その指輪は彼氏さんからのか。
だから気にしてるんでしょ?
それで悩みや泣いてるのも、きっと彼氏さんの事だ。」
私はすぐにAさんを見た。
凄く笑ってるのは判る。
「どうして…」
「あはは!!
簡単じゃない!!
そんな理由。
俺じゃなくても、Sさんの反応を見ればすぐに判る!!」
私は動揺した。
でも少し笑って言った。
「Aさんは、面白いなぁ。」
その時にAさんの方が驚く様子をして、でもまた笑った。
私はそれを見て、少し晋作と反応が似てるとも思った。
でもAさんは、なぜか目を閉じた。
「いや、その笑顔は…
反則級でしょう。
俺は見なかった事にしよう。
少なくても、俺は通りすがりのAさんだから。」
うん?
「何か、変だった?」
Aさんは目を開けた。
「いや、変じゃないよ、これは逆かな?
それにも気付いてないのか。
なかなか居ないのに、勿体ないなぁ!!」
私は疑問だけ言った。
「気付いてない?」
Aさんも笑って言った。
「あぁ、せっかく綺麗なのに。
それにも気付いてないからね。
俺の予測だ!!
きっと彼氏さんがだな!!
彼氏さんしか言ってないだけだ!!」
私はまた驚いた。
「どうして、それを…」
「あははは!!
やっぱ、面白い!!
こんな女性、絶対居ないな!!
俺の目は狂ってなかった!!」
うん?
狂って?
私は首を傾げた。
「ねぇ、確かに俺とSさんは通りすがりだけどね。
でも、泣くぐらいなら…
その彼氏さんと、早く『別れた』方が良いんじゃないの?」
私は凄い衝撃だった。
早く、別れた方が良い?
それは…
私が下を向いた時だった。
「彩香!!」
**************************
私は大きく呼ばれた事で驚いた。
今の声は、まさか。
でも、なんで?
私は声が聞こえた方を見た。
少し離れたところにだった。
仕事用のスーツ姿の晋作が居た。
でも…
なんで?
いつもとまた…
雰囲気が?
晋作は近付いて来る。
私は動揺する。
でもすぐに手を引き寄せると言った。
「今は何も言わなくて良い。」
「え?」
でも晋作は少し笑って、まただった。
ソッと私の両目の方に片手を添えた。
え?
見えない?
「俺の彼女が、どうやら世話になった様子だがなぁ。
さっきの『最後』は、俺にも聞こえたが…
俺は彩香を離す気はないんだ。
すまないが、それは一切、考えたくもないんだが?
彩香を守るのは変わらないが…
お前ぐらいなら『俺』が、いくらでも『処分』出来そうだがな…
今、『この場』には彩香が居る。
後で、『対処』させて貰おう。」
「あんたが、彼氏さんか…
なるほどなぁ。
だからか…
でも、確かに俺ぐらいじゃ。
勝てないだろうが…
でも俺は、あんたに言いたい事がまだあるぞ?」
「なんだ?」
「あんたは、全部、見てなかったんだろうがなぁ!!
でも俺だったらなぁ。
あんたみたいに、どんなに金だろうが。
力があっても、自分の彼女ぐらい…
泣かせるもんか!!」
え!?
それは晋作のせいじゃ…
「彩香が、泣いてたのか…
だからか、今日の行動だな。
もう『それだけ』で、『理解』もした。」
私は焦って言った。
「し、晋作?
あの、晋作のせいでだった訳じゃ…」
「彩香、後で話せる…」
私は何も言えなくなった。
でもまただった。
声だけは聞こえる。
「俺はただ、少しでも、『笑わせて』あげたかっただけなんだなぁ…
あんな顔までさせておきながら…
俺はもう、我慢できねぇな!!
あんたに言いたいんだが、もう一つ良いか!?
どうせ、あんたの事だ。
全部、彼女さんをだ。
俺みたいなのから『避けて』きたんだろうがなぁ。
ずっと俺が気になってたからだ。
それにあんた、気付いてるのか!?」
「彩香の事で、俺が知らない事なんてない。」
「やっぱりか。
全然、判ってねぇじゃんか!!」
「俺が、判ってないだと?」
「あぁ、そうだ。
俺だってなぁ、彼女さんにだ。
確かに『綺麗』だったのもあるけどなぁ。
でも俺は勿論。
最初から声をかける気はしなかったぞ?
指輪もしてるからなぁ。
そんなの、彼氏がいる事だって判る。
でも俺は見てたからだ!!
だから声をかけたんだ!!
もう、あれだけ優しいのに、俺はすぐに判った…
その彼女さんがだぞ!?
指輪を見てだ、少し嬉しそうに笑うのにだ。
それなのに、どうして、その後にまた『悲しそうな顔』になるんだよ!?
その上でだぞ!?
泣いたんだぞ!!
完全にもう、『あんた』が理由だろう!!
その上に、まだ気付いても居ない癖に…
その彼女さんを本当に判ってるなんて、俺には全然見えねぇぞ!!」
「なるほど…
その状況すら『今、聞けば』充分理解した。
だが…
たかが『数分間』ぐらいで。
他に彩香の何が、お前に判る?」
「あんた、すげぇ、頭も良いっぽいな…
確かに『理解』してそうで、マジこえぇが。
それなのにだと思うと、俺は許せないな?
確かに、あんたがずっと守ってきたんだろうが…
でも、だったら、どうしてだ?
あんな顔で…
あんたが『さやか』って叫んだ瞬間だ!!
俺はその一瞬、見てたからなぁ!?
どう見たってあれは、『困ってた』だろう!?
その前もそうだ!!
俺は確かに泣いたから、声はかけた。
でもその彼女さんはなぁ。
最初、俺から離れようとしたけどなぁ。
すげぇ優しいぐらい、瞬時に判った。
自分が泣いてる事よりも、たった俺の僅かな言葉にだ。
俺が『愚痴を』って言った瞬間にだ。
ハンカチは断ったのに、俺の方を先に気遣った。
それだけもう、どれだけ優しいかぐらい、俺すら瞬時に判った。
だから言った、『俺は近付かない』と。
俺は『怖がらせたくない』と思ったからだ。
だから、泣かせたままになんて、出来ないと。
だから少し、そのまま話しただけだ!!
そうしたら、今度は『愚痴ぐらいは』って。
自分は泣いてたのに、それすら言わないのに。
俺の方を優先して、気遣ったんだぞ!!
だからもう、俺だってすぐに判ったし。
そんな会話が少なくても、すぐに泣いてる理由すらも判ったんだ!!
『泣いてた原因』も、そして『困ってる原因』も。
全部、『あんた』だろう!!」
「ま、違う、それは…」
「なるほど。
彩香が優し過ぎるぐらい。
俺だって充分、知ってる。
今の話で、二人の『行動の予測』すらも、俺には簡単だ。
確かに、俺が『迷わせた事』が原因だろう。
だが、俺はそんな迷いすらも『消す』だけだ。
お前には関係ない。」
「違う!!
やっぱりお前は判ってねぇだろ!?」
「何だと?」
「今から、あんたのする『行動』ぐらい。
俺すら、そんな『言動』で判るがなぁ。
彼女さんの欲しがってるものなんか。
今のあんたになんて…
絶対に無理だ!!」
「彩香の事を、知らないお前が…
何を…」
「彼女さんが欲しがってるものは絶対にだ!!
さっきので俺は充分に判ったぞ!!
それは『安心』だ!!
でも、あんたが今からしようとしてる事の。
どこに、何が『安心』するんだ!!
凄くあんなに悲しそうな顔だったのに…
泣かせておきながら…
俺との僅かな会話でだぞ!!
俺が指摘しただけだ。
彼氏がいるならと。
安心させる為にと『距離』をおいた。
安心させる為にと『時間』を提示した。
安心させる為にと『指摘』をもした。
全て『僅かな会話だけ』だったんだぞ!?
そんな僅かな『安心』だけ…
あんなにも嬉しそうに彼女さんが笑ったんだ!!
どれだけ、あんたが不安にさせてたんだ!?
ずっとじゃねぇか!!
しかも、彼氏だったら、側に居たって不思議でも何でもないのに。
どうして、『一人』で泣いてるんだよ!!
おかしいだろ、そんなの!!
俺は別に、彼女さんがどうだとかは、まだ考えては居なかった。
魅力的な女性にぐらいしか思わなかったし。
彼氏がいるなら、それでも良いと、本気で思ってた。
でもなぁ、あんな僅かで…
ただ、俺が僅かにしか出来ない『安心』だけでだ…
あの悲しそうな顔も、泣いてる顔も、『消せた』のは俺だ!!
俺は何も知らない。
さやかって名前だって、今、知った。
俺の名前だって、名乗ってない!!
『10分だけ』だと、『安心』させる為だけの仮名を使った。
そんな程度の、あんな僅かな間だけで、どれだけ。
彼女さんがだぞ、それだけ『不安』だったからだろ!?
それを、あんたが…
何も出来てねぇじゃねぇか!!」
「言いたい事は、それで全部か?
お前の言った言葉で、『内容も全て』理解した…
それならば、俺が彩香の求めにだ。
『全て』合わせるだけだ。
それで満足か?」
「いや、最後にこれは頼みだな?
どうせもう、会う事もないし?
俺からも近付く気はないからな?
あんたが警戒する事もない。
だから、彼女さんに少し話させてくれ。」
「それは…」
「もし、あんたが『駄目』だと言うぐらいなら。
それはもう『愛情』でもないな。
もうあんたがしてるのは、ただの『束縛』だぞ。
それをずっと、彼女さんにしてるのか?」
**************************
晋作の手が私からスッと退いた。
私はそれで晋作の顔を見る。
でも晋作は目を閉じていた。
私はまた困惑する。
「なぁ、さやかさん。」
私はそれでAさんの方を向いた。
Aさんは優しく笑って言った。
「さやかさんって名前だろ?
俺な、確かに彼女にフラれたけどさぁ。
でもまた、俺も頑張って謝ってくるぜ?
そんでまた笑わせてやりたいんだ!!
さっきの少ししか、話せなかったけど。
でも、さやかさんが教えてくれたようなもんだ!!」
私はどうにか疑問だけ言った。
「教えた?」
Aさんは優しく笑って言った。
「あぁ、そうなんだ。
まぁ、あっちも怒ってるから。
時間かかるかもだけどな?
でも、俺が判った。
『不安』にさせた、『心配』させた。
だから、怒ったんだって。
だから俺が謝って、『安心』させてか?
やっぱり『笑わせて』あげたいんだ!!」
私は意味が判った。
だから笑って言った。
「良かった、Aさんも笑ってる。
ならきっと、幸せになれるね!!」
またAさんは驚いて、目を閉じた。
「危ねぇ…
この反則級の顔は、俺が危ねぇ…
確かに彼氏さんが暴走する気持ちが判りそうで、俺がこえぇ。
でも、俺は間違えない。
俺が好きなのは、彼女だけなんだ、俺は。」
私は首を傾げた。
Aさんは目を開けて、また笑って言った。
「そこの彼氏さんには、俺がかな~り言った。
だからきっと、いや?
判らないか、でも、理解は多分してるぐらい。
馬鹿でもないと、俺診断だが?
まぁ、さやかさんも、これでもう『安心』出来るぞ!?
だったら、俺達、全員ハッピーになるぞ?
もうあんな風に泣くぐらいなら、俺と彼女んところに来い!!
俺が他の良い男ぐらい、たくさん仲間呼んでやっから。
絶対に楽しくなるぜ?」
私はもうまた笑った。
「あはは!!
そうだね、確かに、皆がそう。
笑うなら、本当に嬉しいなぁ!!」
Aさんは驚いて、目を閉じた。
「だから、その笑顔、反則です。
俺には、彼女が居ます。
あれ?
いや、まだ予定だけど、でも復縁するし?
絶対するし?
だから浮気はしないから、大丈夫です。」
私はまた不思議に見る。
Aさんは目を開けて、また笑って言った。
「それに俺は、さやかさんの彼氏程の馬鹿しないぜ。
まぁ、会わない方が皆ハッピーなんだしなぁ。
何もない事を願ってるぜ?」
私は少し嬉しくなった。
それにこんなに親切にしてくれた事にもだった。
「ねぇ?
もう私の名前を知ってる。
通りすがりのAさんじゃないよ?
名前は何?」
若干、驚く様子だったが、笑って言った。
「俺の名前か、陽だ!!
太陽の『陽』って1文字だ!!」
「陽さんも、彼女さんとね!」
「あぁ!!」
その時、陽さんが晋作を見た。
「おぃ、そこの彼氏さ~ん。
もうなぁ、ちゃんと頼むぜ?
今後かぁ?
この子なぁ、ちょっとマジ危なっかしいぞ?
俺がまだ、健全で良かっただろ?」
晋作は両腕を組んだまま、目を閉じて立っていたが…
大きく溜息を出す。
「それすら充分、理解してる。
お前に言われたくない。」
陽さんが晋作に笑った。
「まぁ、あんたの『苦労』も判るがなぁ!!
でもな、俺は馬鹿しねぇから、そこ。
ちゃんとだぞ!!
俺はまぁ、自分の彼女が一番だから、手は出さねぇし!!」
晋作は首を横に振っただけで無言だった。
私の方にと向いて陽さんは笑った。
「じゃあな!!
これがまさに一期一会?ってやつか?
俺はあんま、勉強嫌いだから詳しくないが。
そうなると良いな!!」
「うん、ありがとう。」
そう言って、陽さんは去って行った。
私は晋作を見る。
晋作は目を閉じたままだった。
私は少し、何も言わなかった。
下を向いた。
「すまなかった…
もう、『心配』もさせたくないから。
頼むから…
もう、『一人』では、泣かないでくれるか?」
私はそこで晋作の顔を見た。
それは嬉しそうに笑った顔だと判る。
だから嬉しくて私は笑った。
晋作もまた若干、驚く顔になって目を閉じて言った。
「判った、それと、もう一つ頼む。
その顔を誰かに向けたりはしないでくれるな?」
私は疑問だけ言った。
「その顔?」
晋作は首を横に振ってから、また目を開けて笑った。
そして私を抱き寄せてくる。
「今日はまだ、まともな馬鹿だったから良いが…
あんな風に笑って接したら、もう駄目だぞ?
だから『一人』には、俺が出来ないんだ…」
私は不思議に見る。
でも晋作はまた笑って、私にスッと頬に手が触れる。
「もう『心配』しないように、俺が『安心』させるから。
どうにかしてみせるから、『一人』で泣くぐらいなら。
俺の側に居てくれ。」
私は晋作がまた嬉しそうな顔なのは判る。
だから私も笑った。
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