考える為に『時間』と、与えるのは『安心』だ。

1/1
前へ
/18ページ
次へ

考える為に『時間』と、与えるのは『安心』だ。

最近、何やら… 晋作(しんさく)の様子が変だな? 時々、何か考える様子を見かけるし… 何かあったのか? 普通に言うんだが、どうも違和感か? 『特に何も心配ないぞ!!』 そう笑って言ってた晋作(しんさく)だが… 私は考える。 ふむ。 可能性はあるよなぁ。 あの晋作(しんさく)だぞ? 仕事では苦労しないだろうが… まぁ、多分。 また『言われてる』ぐらいか? 予測しか出来ないが。 でも私は充分、幸せだしなぁ。 また元に戻っても、晋作(しんさく)が笑うなら… 『俺の幸せには、彩香(さやか)が居なければ、絶対にない。 それは断言出来る事だ。 だから、それを忘れずに、彩香(さやか)も居て欲しい。』 私は思い出す。 だがなぁ。 忘れはしないが、その『選択』を。 晋作(しんさく)は『後悔』するのではないか? 私は頭から振り払う。 私はもう、望んだら、いけない。 ************************** とある日。 私はいつもと変わらずに家事を終わらせる。 ふむ。 今頃、晋作(しんさく)は… 私はリビングの方へ行った。 居ないな? だから私はまた主寝室の方へ行った。 居た。 また携帯か? 仕事か? ふむ。 私は少し晋作(しんさく)の側に近付くと気付いた様子だった。 側に携帯を置いて、私の方に笑う。 「もう終わったのか? そんなに急ぐ事もないぞ?」 私も少し笑う。 この顔は笑ってるが… 私は少し考える。 「なぁ、晋作(しんさく)? 私はちょっと外出したいんだが… まぁ、少ししたらまた戻ってくるし? 私の携帯は知ってるよな?」 晋作(しんさく)は少し驚く顔をしてだった。 「どこに… 外出したいと? そう言うなら、行き先は決まってるのだろう?」 私は少し考える。 「井の頭公園だ。 そこで少し、散策してくる。」 私はそれを言ってから、すぐに移動を自室の方へと向かおうとした。 「さ、彩香(さやか)!? 待て、だったら俺も一緒に行くぞ?」 私は少し振り返る。 晋作(しんさく)の顔を見る。 それは… また心配か? 私は首を横に振って笑う。 「晋作(しんさく)、大丈夫だ。 戻ってくるし、そんなに時間はかからない。 そうだな… 晋作(しんさく)が仕事中に、勝手に居なくなる方が。 心配するだろ? だったら、ちゃんと言ってからと思っただけだ。 その間は、普段から大変だろうが、晋作(しんさく)も休んだ方が良いからな!!」 私はそう言ってから、自室の方にとまた行こうとする。 けれど、晋作(しんさく)の方が腕を掴んで止めた。 私は少し焦る様子の顔をした晋作(しんさく)を見た。 「彩香(さやか)? 何を考えてる!? 今まで、そんな行動すらしなかったのにか!?」 私は少し笑う。 「大した事じゃない。 普段から忙しい晋作(しんさく)の邪魔はしたくないだけだ。 それに連絡先も知ってるし、行き先も言ってる。 別に仕事でもないからな、私には『無理』はないぞ?」 「だが… いつもと様子が…」 私は少し、首を傾げた。 いつもと違うのは… 晋作(しんさく)だと思うが… それに晋作(しんさく)はさっき笑ってたが。 それは… 「大丈夫だ、晋作(しんさく)。 私は消えたりはしない。 それにまぁ、意外と面白いものだぞ? 人間観察ってのもなぁ。 人の事が良く判るようにもなるからな。 だから公園に行くだけだ。」 「でもそれは…」 私はスッと手を晋作(しんさく)の頬に触れる。 少し笑う。 「晋作(しんさく)の方がだぞ?」 「俺?」 「あぁ、確かに笑うけれど。 その笑顔は違うぐらい。 私には判る。」 晋作(しんさく)は若干、動揺した様子を私は見た。 私は少し笑って言った。 「晋作(しんさく)も何か考えているのだろう? いつも、一緒なのは変わらないがなぁ。 でも、今はそうだな。 晋作(しんさく)も少し、考える時間が必要だろう。 それに私の行く場所も、戻ってくる場所も。 晋作(しんさく)には、ちゃんと言ったぞ?」 晋作(しんさく)は若干、動揺を隠せずにだった。 首を横に振った。 「だが、今の彩香(さやか)だって笑ってないだろう? 何を考えると?」 ふむ。 そうだな… 私はでも笑って言った。 「私が考える事はいつも一つだけだ。 晋作(しんさく)の事だけだな。 だから、少し外出するだけだ。 もし、今、止めれば… 晋作(しんさく)が仕事中に行くが?」 晋作(しんさく)はまだ驚く顔をする。 「それは…」 私は笑う。 「公園に行くぐらいなら、問題ないからな? ちゃんと戻ってくる。」 私はそのまま、自室で簡単に着替えると、久々に一人で外出した。 ************************** 電車に久々に乗ったなぁ。 さて、実際着いた、井の頭公園か。 今日は平日だし、人も少ない事もあるが… それでも多いのが、まぁ、この場所は人口も多いから当たり前か? 私は取り敢えず、フラフラと特に目的もなく歩く。 やっぱりカップルが多いな。 まぁ、当たり前か? スタバで飲み物だけを買って、また歩く。 取り敢えず空いてるベンチを探して座る。 まぁ、昔から『人間観察』は嫌いではないが… さて、どうしたものかなぁ。 晋作(しんさく)には、私の気持ちは言ったが。 そのせいもあって、無理にでも隠そうとするか… それは逆だろう? 私が前にしていたのと同じだが。 晋作(しんさく)は気付いてない様子だな? ふむ。 私は指輪を見る。 あの時の嬉しそうな笑顔が浮かぶ。 私が言わない方が良かったか? だがなぁ。 ずっと晋作(しんさく)の中には。 あの10年前の事をだ。 ずっとまだ心にある。 それをどうするのが一番だろうか? 今だって、本来であれば… あの時に欠員が出たからこそ。 私を見つけたと言っていたな? 確かにあれだけ、ずっと探していたと知った時は。 私の失敗だと、大きく思ったが… せめて、一旦、置くのではなく。 消える前に話すべきだっただろう。 そのせいで結局、晋作(しんさく)は… 私に捕らわれてないか? 別に私の幸せは… 『晋作(しんさく)が幸せ』になる事に変わらないんだが。 だがなぁ。 『俺の幸せには、彩香(さやか)が居なければ、絶対にない。 それは断言出来る事だ。 だから、それを忘れずに、彩香(さやか)も居て欲しい。』 忘れたりはしないがな? それは嬉しい言葉なのもそうだ。 けれど、それはな… 『私』でなくても、叶う事だと。 判ってるのか? 確かに『彩香(さやか)』の部分をだがなぁ。 それを他の人に置き換えれてしまえば。 アッサリと解決するんだぞ? まして、晋作(しんさく)の場合は尚更だろう。 『孫』を望まれてる上に、晋作(しんさく)の身内はまぁ。 晋作(しんさく)が『規格外』なのは充分判るが。 そもそも、晋作(しんさく)の身内が全て『規格外』か? だから気付かないんだろうが… 私も気付いていないらしいし。 それに気付かない事は、別に? 何も問題にすらなってないな? 私は行き交う人達を見た。 皆が楽しそうに笑ってるな。 それは良いことだ。 いきなり、晋作(しんさく)の前から消える事はしないがなぁ。 前の失敗でもある。 それを前提に、どうするかだが… 私はまた指輪を見る。 少し笑う。 あの時、本当に嬉しそうだったなぁ。 あの買い物も、晋作(しんさく)らしいと言えば? 晋作(しんさく)らしいが… でも、そうやって笑っていて欲しいが。 それはもう、長くしない方が。 晋作(しんさく)の為になるか? でも急には無理だな。 あの晋作(しんさく)の苦しそうな声。 あれは私のせいだろう。 だったら、尚更、同じ失敗は出来ないか。 誰か代わりを… 私は自然に涙が零れた。 咄嗟に気付いて、すぐに拭く。 いけない!! こんな場所だと余計にだ!! 「ねぇ、お姉さん。 泣いてるなら、これを使って?」 ************************** 私は驚いて、すぐに見ると知らない男性だった。 私は首を横に振った。 「さっきから、見てたんだけど。 かなり考え込んでるみたいだったし? だから声はかけなかったんだけど。 でもねぇ、流石に泣かれたら… 放置は出来ないでしょ?」 私は動揺してその男性を見る。 私より、少し下ぐらいだろうか? でも、それは受け取れない。 「いえ、結構です。 ただ、気持ちは… 嬉しいですが…」 私はすぐに涙を拭って、立ち去ろうとした。 「もしかして、ナンパかと思われちゃったかな? 別に携帯番号だの、何だの聞かないよ? 俺もまぁ、一人でフラフラしてただけだし? どうせ少ししか居ないなら、俺の愚痴ぐらい聞いてくれない?」 うん? 愚痴? ナンパでもなかったのか? 私は不思議に思って、またその男性を見た。 そうすると、男性は自然と笑ってた。 私は首を傾げた。 「愚痴を?」 その男性はまた笑った。 「そっちには反応するの? ハンカチは断ったのに… そうだなぁ、お姉さんの愚痴? いや、泣いていた悩み? どうせもう会わないんだから、言っちゃえば?」 私は考える。 「でも、もう会わないか、判らないでしょう? だったら、それは出来ない。 でも… 貴方には、愚痴があるの?」 その男性はまた驚いた様子になったのを見た。 けれどまたすぐに笑った。 「あはは!! お姉さん、面白いな!! 泣いてたのはお姉さんなのに? それなのに、自分よりも、俺の方? まぁ、愚痴って言えば、愚痴だけど。 大した事でもないよ。 でもまぁ、俺が今、笑えるのも、お姉さんのおかげかな? あはは!!」 うん? 私が変な事でも言ったかな? 凄く楽しそうに笑うが… 私が不思議に見てると、その男性が笑いを抑えて言った。 「あぁ、なるほどね。 そうだなぁ。 まぁ、ちょっと今だけだから。 俺の名前も、お姉さんの名前も聞かないし? それに連絡先だって聞かない。 たまたま通りかかった人って感じだから? 通りすがりのAさんぐらいで俺を認識してれば良いかな? お姉さんのどのアルファベットを選ぶ?」 私はそれで考える。 「なら『S』かな? 通りすがりのAさんは… 若干、安易過ぎる気もするけれど…」 「あははは!! まぁ、そうか? でも俺の名前のアルファベットだから。 そこは許してよ? でもまぁ、どうせ俺も暇だしね。 愚痴ってのはまぁ、彼女の事。 俺が失敗してフラれただけだなぁ。 だから、単純に今日は気分転換中だったら。 Sさんを見かけただけ。 そしたら、何やら考えてるし? その上、泣いちゃうし? ちょっとね? それにSさんも、彼氏さんの事でしょ?」 私は動揺した。 「何で…」 「あははは!! だって指輪、してるじゃない? って事は、彼氏さんが居るでしょ? それなのに一人だ。 答えは簡単でしょ?」 私はまた動揺した。 でもそうか。 確かに指輪が有る無しでまた変わるのも判るし。 そもそも、晋作(しんさく)がその為に買ったけれど。 あったから、声をかけなかった。 でも、私が泣いたから、声をかけてきた? 「まぁ… それは、そうだけど… 良くそこまですぐに?」 Aさんはまた笑った。 「そりゃ、Sさんは目立つでしょ。 そんな服装だって、そうだし? その指輪だって、かなり高い筈だ。 それだけで充分だったけどね? Sさんがお金持ちか、彼氏さんがお金持ちなだけだと。 すぐに判る事でしょ?」 私はまた驚いた。 言われてしまえば、その通りだろう。 確かに晋作(しんさく)がそもそも『規格外』だから。 単純にそうなる。 「Aさんは… 良く、見てるんだね。」 「まぁね、人間観察してれば。 簡単だからねぇ。 でも、Sさんは、どうも観察してる様子は最初してたけれど。 今度は何やら悩み出すし? その上に泣かれちゃうし? 俺は少し迷ったけどねぇ。 それに警戒心もありそうだ。 だから俺からは一歩も近付いてないでしょ? まぁ、ハンカチは断られたけれど。 それでも、愚痴は聞いてくれるらしいのには。 俺でも予想外な反応だったけど。」 どうやら… 確かに悪い人でもない様子であるが… 晋作(しんさく)が嫌がりそうだし。 近付くのは出来ないか… 「別に、近付いて来ないなら。 問題ないけれど… でも、そんなに時間もないから…」 Aさんは笑って言った。 「あぁ、彼氏さんを気にしたのか。 まぁ、そうなるだろうねぇ。 良いよ、俺からは一切、近付かない。 時間もないなら、10分にしよう。 それならどう?」 10分… まぁ、でも、確かに歩いて考えてるだけでも。 それはそのぐらい? 私は首を傾げる。 「10分だけだったら。 その場から動かないなら… 問題ないのかな? でも、それでも…」 私は指輪を見る。 晋作(しんさく)は嫌うのでは? どうなんだろう? この人、悪い人には見えないけれど。 「なるほど。 その指輪は彼氏さんからのか。 だから気にしてるんでしょ? それで悩みや泣いてるのも、きっと彼氏さんの事だ。」 私はすぐにAさんを見た。 凄く笑ってるのは判る。 「どうして…」 「あはは!! 簡単じゃない!! そんな理由。 俺じゃなくても、Sさんの反応を見ればすぐに判る!!」 私は動揺した。 でも少し笑って言った。 「Aさんは、面白いなぁ。」 その時にAさんの方が驚く様子をして、でもまた笑った。 私はそれを見て、少し晋作(しんさく)と反応が似てるとも思った。 でもAさんは、なぜか目を閉じた。 「いや、その笑顔は… 反則級でしょう。 俺は見なかった事にしよう。 少なくても、俺は通りすがりのAさんだから。」 うん? 「何か、変だった?」 Aさんは目を開けた。 「いや、変じゃないよ、これは逆かな? それにも気付いてないのか。 なかなか居ないのに、勿体ないなぁ!!」 私は疑問だけ言った。 「気付いてない?」 Aさんも笑って言った。 「あぁ、せっかく綺麗なのに。 それにも気付いてないからね。 俺の予測だ!! きっと彼氏さんがだな!! 彼氏さんしか言ってないだけだ!!」 私はまた驚いた。 「どうして、それを…」 「あははは!! やっぱ、面白い!! こんな女性、絶対居ないな!! 俺の目は狂ってなかった!!」 うん? 狂って? 私は首を傾げた。 「ねぇ、確かに俺とSさんは通りすがりだけどね。 でも、泣くぐらいなら… その彼氏さんと、早く『別れた』方が良いんじゃないの?」 私は凄い衝撃だった。 早く、別れた方が良い? それは… 私が下を向いた時だった。 「彩香(さやか)!!」 ************************** 私は大きく呼ばれた事で驚いた。 今の声は、まさか。 でも、なんで? 私は声が聞こえた方を見た。 少し離れたところにだった。 仕事用のスーツ姿の晋作(しんさく)が居た。 でも… なんで? いつもとまた… 雰囲気が? 晋作(しんさく)は近付いて来る。 私は動揺する。 でもすぐに手を引き寄せると言った。 「今は何も言わなくて良い。」 「え?」 でも晋作(しんさく)は少し笑って、まただった。 ソッと私の両目の方に片手を添えた。 え? 見えない? 「俺の彼女が、どうやら世話になった様子だがなぁ。 さっきの『最後』は、俺にも聞こえたが… 俺は彩香(さやか)を離す気はないんだ。 すまないが、それは一切、考えたくもないんだが? 彩香(さやか)を守るのは変わらないが… お前ぐらいなら『俺』が、いくらでも『処分』出来そうだがな… 今、『この場』には彩香(さやか)が居る。 後で、『対処』させて貰おう。」 「あんたが、彼氏さんか… なるほどなぁ。 だからか… でも、確かに俺ぐらいじゃ。 勝てないだろうが… でも俺は、あんたに言いたい事がまだあるぞ?」 「なんだ?」 「あんたは、全部、見てなかったんだろうがなぁ!! でも俺だったらなぁ。 あんたみたいに、どんなに金だろうが。 力があっても、自分の彼女ぐらい… 泣かせるもんか!!」 え!? それは晋作(しんさく)のせいじゃ… 「彩香(さやか)が、泣いてたのか… だからか、今日の行動だな。 もう『それだけ』で、『理解』もした。」 私は焦って言った。 「し、晋作(しんさく)? あの、晋作(しんさく)のせいでだった訳じゃ…」 「彩香(さやか)、後で話せる…」 私は何も言えなくなった。 でもまただった。 声だけは聞こえる。 「俺はただ、少しでも、『笑わせて』あげたかっただけなんだなぁ… あんな顔までさせておきながら… 俺はもう、我慢できねぇな!! あんたに言いたいんだが、もう一つ良いか!? どうせ、あんたの事だ。 全部、彼女さんをだ。 俺みたいなのから『避けて』きたんだろうがなぁ。 ずっと俺が気になってたからだ。 それにあんた、気付いてるのか!?」 「彩香(さやか)の事で、俺が知らない事なんてない。」 「やっぱりか。 全然、判ってねぇじゃんか!!」 「俺が、判ってないだと?」 「あぁ、そうだ。 俺だってなぁ、彼女さんにだ。 確かに『綺麗』だったのもあるけどなぁ。 でも俺は勿論。 最初から声をかける気はしなかったぞ? 指輪もしてるからなぁ。 そんなの、彼氏がいる事だって判る。 でも俺は見てたからだ!! だから声をかけたんだ!! もう、あれだけ優しいのに、俺はすぐに判った… その彼女さんがだぞ!? 指輪を見てだ、少し嬉しそうに笑うのにだ。 それなのに、どうして、その後にまた『悲しそうな顔』になるんだよ!? その上でだぞ!? 泣いたんだぞ!! 完全にもう、『あんた』が理由だろう!! その上に、まだ気付いても居ない癖に… その彼女さんを本当に判ってるなんて、俺には全然見えねぇぞ!!」 「なるほど… その状況すら『今、聞けば』充分理解した。 だが… たかが『数分間』ぐらいで。 他に彩香(さやか)の何が、お前に判る?」 「あんた、すげぇ、頭も良いっぽいな… 確かに『理解』してそうで、マジこえぇが。 それなのにだと思うと、俺は許せないな? 確かに、あんたがずっと守ってきたんだろうが… でも、だったら、どうしてだ? あんな顔で… あんたが『さやか』って叫んだ瞬間だ!! 俺はその一瞬、見てたからなぁ!? どう見たってあれは、『困ってた』だろう!? その前もそうだ!! 俺は確かに泣いたから、声はかけた。 でもその彼女さんはなぁ。 最初、俺から離れようとしたけどなぁ。 すげぇ優しいぐらい、瞬時に判った。 自分が泣いてる事よりも、たった俺の僅かな言葉にだ。 俺が『愚痴を』って言った瞬間にだ。 ハンカチは断ったのに、俺の方を先に気遣った。 それだけもう、どれだけ優しいかぐらい、俺すら瞬時に判った。 だから言った、『俺は近付かない』と。 俺は『怖がらせたくない』と思ったからだ。 だから、泣かせたままになんて、出来ないと。 だから少し、そのまま話しただけだ!! そうしたら、今度は『愚痴ぐらいは』って。 自分は泣いてたのに、それすら言わないのに。 俺の方を優先して、気遣ったんだぞ!! だからもう、俺だってすぐに判ったし。 そんな会話が少なくても、すぐに泣いてる理由すらも判ったんだ!! 『泣いてた原因』も、そして『困ってる原因』も。 全部、『あんた』だろう!!」 「ま、違う、それは…」 「なるほど。 彩香(さやか)が優し過ぎるぐらい。 俺だって充分、知ってる。 今の話で、二人の『行動の予測』すらも、俺には簡単だ。 確かに、俺が『迷わせた事』が原因だろう。 だが、俺はそんな迷いすらも『消す』だけだ。 お前には関係ない。」 「違う!! やっぱりお前は判ってねぇだろ!?」 「何だと?」 「今から、あんたのする『行動』ぐらい。 俺すら、そんな『言動』で判るがなぁ。 彼女さんの欲しがってるものなんか。 今のあんたになんて… 絶対に無理だ!!」 「彩香(さやか)の事を、知らないお前が… 何を…」 「彼女さんが欲しがってるものは絶対にだ!! さっきので俺は充分に判ったぞ!! それは『安心』だ!! でも、あんたが今からしようとしてる事の。 どこに、何が『安心』するんだ!! 凄くあんなに悲しそうな顔だったのに… 泣かせておきながら… 俺との僅かな会話でだぞ!! 俺が指摘しただけだ。 彼氏がいるならと。 安心させる為にと『距離』をおいた。 安心させる為にと『時間』を提示した。 安心させる為にと『指摘』をもした。 全て『僅かな会話だけ』だったんだぞ!? そんな僅かな『安心』だけ… あんなにも嬉しそうに彼女さんが笑ったんだ!! どれだけ、あんたが不安にさせてたんだ!? ずっとじゃねぇか!! しかも、彼氏だったら、側に居たって不思議でも何でもないのに。 どうして、『一人』で泣いてるんだよ!! おかしいだろ、そんなの!! 俺は別に、彼女さんがどうだとかは、まだ考えては居なかった。 魅力的な女性にぐらいしか思わなかったし。 彼氏がいるなら、それでも良いと、本気で思ってた。 でもなぁ、あんな僅かで… ただ、俺が僅かにしか出来ない『安心』だけでだ… あの悲しそうな顔も、泣いてる顔も、『消せた』のは俺だ!! 俺は何も知らない。 さやかって名前だって、今、知った。 俺の名前だって、名乗ってない!! 『10分だけ』だと、『安心』させる為だけの仮名を使った。 そんな程度の、あんな僅かな間だけで、どれだけ。 彼女さんがだぞ、それだけ『不安』だったからだろ!? それを、あんたが… 何も出来てねぇじゃねぇか!!」 「言いたい事は、それで全部か? お前の言った言葉で、『内容も全て』理解した… それならば、俺が彩香(さやか)の求めにだ。 『全て』合わせるだけだ。 それで満足か?」 「いや、最後にこれは頼みだな? どうせもう、会う事もないし? 俺からも近付く気はないからな? あんたが警戒する事もない。 だから、彼女さんに少し話させてくれ。」 「それは…」 「もし、あんたが『駄目』だと言うぐらいなら。 それはもう『愛情』でもないな。 もうあんたがしてるのは、ただの『束縛』だぞ。 それをずっと、彼女さんにしてるのか?」 ************************** 晋作(しんさく)の手が私からスッと退いた。 私はそれで晋作(しんさく)の顔を見る。 でも晋作(しんさく)は目を閉じていた。 私はまた困惑する。 「なぁ、さやかさん。」 私はそれでAさんの方を向いた。 Aさんは優しく笑って言った。 「さやかさんって名前だろ? 俺な、確かに彼女にフラれたけどさぁ。 でもまた、俺も頑張って謝ってくるぜ? そんでまた笑わせてやりたいんだ!! さっきの少ししか、話せなかったけど。 でも、さやかさんが教えてくれたようなもんだ!!」 私はどうにか疑問だけ言った。 「教えた?」 Aさんは優しく笑って言った。 「あぁ、そうなんだ。 まぁ、あっちも怒ってるから。 時間かかるかもだけどな? でも、俺が判った。 『不安』にさせた、『心配』させた。 だから、怒ったんだって。 だから俺が謝って、『安心』させてか? やっぱり『笑わせて』あげたいんだ!!」 私は意味が判った。 だから笑って言った。 「良かった、Aさんも笑ってる。 ならきっと、幸せになれるね!!」 またAさんは驚いて、目を閉じた。 「危ねぇ… この反則級の顔は、俺が危ねぇ… 確かに彼氏さんが暴走する気持ちが判りそうで、俺がこえぇ。 でも、俺は間違えない。 俺が好きなのは、彼女だけなんだ、俺は。」 私は首を傾げた。 Aさんは目を開けて、また笑って言った。 「そこの彼氏さんには、俺がかな~り言った。 だからきっと、いや? 判らないか、でも、理解は多分してるぐらい。 馬鹿でもないと、俺診断だが? まぁ、さやかさんも、これでもう『安心』出来るぞ!? だったら、俺達、全員ハッピーになるぞ? もうあんな風に泣くぐらいなら、俺と彼女んところに来い!! 俺が他の良い男ぐらい、たくさん仲間呼んでやっから。 絶対に楽しくなるぜ?」 私はもうまた笑った。 「あはは!! そうだね、確かに、皆がそう。 笑うなら、本当に嬉しいなぁ!!」 Aさんは驚いて、目を閉じた。 「だから、その笑顔、反則です。 俺には、彼女が居ます。 あれ? いや、まだ予定だけど、でも復縁するし? 絶対するし? だから浮気はしないから、大丈夫です。」 私はまた不思議に見る。 Aさんは目を開けて、また笑って言った。 「それに俺は、さやかさんの彼氏程の馬鹿しないぜ。 まぁ、会わない方が皆ハッピーなんだしなぁ。 何もない事を願ってるぜ?」 私は少し嬉しくなった。 それにこんなに親切にしてくれた事にもだった。 「ねぇ? もう私の名前を知ってる。 通りすがりのAさんじゃないよ? 名前は何?」 若干、驚く様子だったが、笑って言った。 「俺の名前か、(あきら)だ!! 太陽の『陽』って1文字だ!!」 「陽さんも、彼女さんとね!」 「あぁ!!」 その時、陽さんが晋作(しんさく)を見た。 「おぃ、そこの彼氏さ~ん。 もうなぁ、ちゃんと頼むぜ? 今後かぁ? この子なぁ、ちょっとマジ危なっかしいぞ? 俺がまだ、健全で良かっただろ?」 晋作(しんさく)は両腕を組んだまま、目を閉じて立っていたが… 大きく溜息を出す。 「それすら充分、理解してる。 お前に言われたくない。」 陽さんが晋作(しんさく)に笑った。 「まぁ、あんたの『苦労』も判るがなぁ!! でもな、俺は馬鹿しねぇから、そこ。 ちゃんとだぞ!! 俺はまぁ、自分の彼女が一番だから、手は出さねぇし!!」 晋作(しんさく)は首を横に振っただけで無言だった。 私の方にと向いて陽さんは笑った。 「じゃあな!! これがまさに一期一会?ってやつか? 俺はあんま、勉強嫌いだから詳しくないが。 そうなると良いな!!」 「うん、ありがとう。」 そう言って、陽さんは去って行った。 私は晋作(しんさく)を見る。 晋作(しんさく)は目を閉じたままだった。 私は少し、何も言わなかった。 下を向いた。 「すまなかった… もう、『心配』もさせたくないから。 頼むから… もう、『一人』では、泣かないでくれるか?」 私はそこで晋作(しんさく)の顔を見た。 それは嬉しそうに笑った顔だと判る。 だから嬉しくて私は笑った。 晋作(しんさく)もまた若干、驚く顔になって目を閉じて言った。 「判った、それと、もう一つ頼む。 その顔を誰かに向けたりはしないでくれるな?」 私は疑問だけ言った。 「その顔?」 晋作(しんさく)は首を横に振ってから、また目を開けて笑った。 そして私を抱き寄せてくる。 「今日はまだ、まともな馬鹿だったから良いが… あんな風に笑って接したら、もう駄目だぞ? だから『一人』には、俺が出来ないんだ…」 私は不思議に見る。 でも晋作(しんさく)はまた笑って、私にスッと頬に手が触れる。 「もう『心配』しないように、俺が『安心』させるから。 どうにかしてみせるから、『一人』で泣くぐらいなら。 俺の側に居てくれ。」 私は晋作(しんさく)がまた嬉しそうな顔なのは判る。 だから私も笑った。
/18ページ

最初のコメントを投稿しよう!

73人が本棚に入れています
本棚に追加