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第一章:『約10年』経っても願ってる事。
今の私はそれ程、大きくもない会社の簡単な事務仕事しかしてない。
生活出来る程度の収入があれば、問題もないし、無理もしたくない。
それでも『職場関係』を円満にする為に、普段からも笑ってもいる。
問題なく、他の会社との交流もあるけれど…
でもそんなのも『仕事』の一つだから、仕方がない。
そうして定時で帰る前に職場の皆にも笑って言う。
「お先に失礼します。
お疲れ様でしたぁ!」
それにも皆が挨拶をそれぞれして、私は会社から出た。
そうして私はまたいつものように、都心の人混みへ。
帰宅する為に、スッと笑顔すらも消した。
今日の仕事をしていて思い出す。
あんな簡単な事すらも出来ないのか?
上司だから、あの場では笑って誤魔化したけれど…
あんなもの、簡単だろうに…
まぁ、本来なら、私が出来たんだけどなぁ。
そこで私は『全て』を切り離した。
そう、もう一切、何もする気も。
出す気もない私でもあった。
『余計な仕事まで、する必要はない。』
今の私が決めた『答え』でもある。
それで良いと判断もしてる。
だから常にも思う事でもあるけど…
特に何も変わらない。
つまらない日々だとも、思ってる。
けど…
それでも、どうしようもない事だろう?
だって私はもう、誰かに『心も身体も』だ。
誰かを『愛する事』も…
全部、やめたからなぁ。
私は心の中で少しだけ笑う。
でも良い。
私の出した『答え』だし。
今更、変える気もないなぁ。
それにきっと、そんな事。
誰もが考えるかもしれないし?
私はそれで、特に何もない…
それで『彼が幸せ』になってるなら、私はそれで充分だ。
**************************
一人、広くもないワンルームだ。
私は部屋に帰ってからは簡単な食事を済ます。
後は疲れを取る為にと、ゆっくりお風呂に入る。
部屋の中で、私はまたいつもと同じようにと。
簡単に音楽だけを流して、小さなソファに座る。
TVは好きじゃない。
ただの雑音、誰かの声なんて、聞いていてウンザリするだけだ。
そんな中でまた、簡単に紅茶を準備する。
私はまたソファに座って、連載中の読書をする。
ふと、その時に思い出した。
それは勝手に流れている音楽だ。
iPodからランダムで、リピートをしているから…
偶然に流れた曲にだった。
あぁ、そうだなぁ。
もうそろそろ、10年ぐらい前にもなるのか?
今頃、晋作は笑っているだろうか?
だったら、それで…
私は良いんだけど。
私は心の中でまた少しだけ笑う。
その曲を聴いてだ、思い出す。
けれどこれは私が出した『答え』だ。
それもずっと、変わらないなぁ。
私はそこで読んでいた本すらテーブルに置いて曲の方を聴く。
少し、感傷に浸る。
そう、こんなのも時々かなぁ。
今ではだけど…
最近はもう、随分と落ち着いたもんだなぁ。
これが歳を取るとってもんなのかなぁ。
まぁ…
それで良いと私は思うし、それにこれはきっと…
一番、晋作の為になると思ってる。
そう思っているし、願ってるのも変わらないけどなぁ。
今頃、晋作はどうしてるんだろうか…
私以外の女の人と、そろそろ約10年ぐらいか?
だったら、上手く新しい…
私なんかよりも、きっと充分、生活も勿論だけど。
子供とか居ても、不思議でもないからなぁ?
それで晋作が『笑ってる』なら、私はそれでもう良いんだけどなぁ…
私からは一切、連絡も場所も教えてないし。
近付くつもりもないから、会う事もないだろう。
そうだったら、良いけどなぁ。
私からも『確認』は出来ないし。
『願う』だけしか出来ないけど…
思い出した事で、また私は晋作を考えた。
でも、仕方がないだろう…
だって、私では…
彼を『幸せ』に出来ないだろうからなぁ?
だったら、私はもうそれで良い。
私の『答え』も変わらない。
今の私は『恋愛感情』すらない。
そして、誰かを愛する気もない。
それでも時々。
関わる人の中でも『恋愛対象』としては声をかけられるけど…
もうそれすらも、受け取る気持ちは一切ない。
晋作と別れてから、そうだなぁ。
他の人から、愛される事は別に悪い事でもないし。
それにまぁ、求められて…
私はそう、晋作を一時期、忘れようともした。
確かに何度か、他の人とも少し付き合う程度もしたが…
一人ぐらいはと、身体も許したけど…
でもその『一度』の身体で、充分だった。
この人は全然違う…
晋作とは、違い過ぎる…
そう思ってから、すぐに私はその人とは別れた。
いくら私を愛してくれようと。
私はもう、その人は愛せないし。
他の人でも変わらないと。
それでもう、誰も『恋愛対象』として見れなくなった。
好意は嬉しいけれど、あの瞬時にすぐ思った。
『違う!!』
私は音楽を聴きながらも思い出す。
あぁ、そう、それだけだったなぁ。
それからはもう『恋愛』すらも、興味をなくしたなぁ?
まだ時々、親が言ってくるけど。
結婚なんて、尚更、考えてもいない。
だからもう、私は『決めた事』もあったなぁ。
もう私は『誰も愛さない』と。
そして、もう同じ。
誰にも心も身体すら求めないと。
だから私はもう、『願う』だけにしたんだったなぁ。
あの唯一、私は『未だに嫌いになれない愛した人』を。
晋作とは、喧嘩をした訳でもない。
仕方がなく別れただけでもある…
それに晋作も、最後は…
初めて、私に泣きながらも、抱いて別れたからこそ。
良く覚えている…
一旦、別れると言ってから。
あの時までは、私も幸せだったんだろう。
お互い、若かったのもあるけど。
別に嫌いになって、お互いが別れた訳でもない。
でも、私の身体は…
『私の身体では、晋作の願いは叶えられない!!』
それがとても大きく強かった。
それに…
あの頃は、私もかなり仕事で無理もしていた。
かなりの無茶も続けたからでもある。
まぁ、結局、そのせいでもあるんだけど…
『困らせる』と。
そして『幸せ』に出来ないなら…
心も全部、晋作を愛しているのも確かに変わらない。
だから、ずっと、別れてからは近付かないと。
愛してるあの人が。
本当に愛しているあの人が。
『他の誰』でも良いんだ。
晋作が『幸せ』になるなら…
私の事を忘れても良いと。
私以外でも、『別の誰か』を愛して…
私はもう会えなくても良いと。
晋作がまた誰かと。
そう、愛した人と一緒に『幸せ』に笑うなら…
私はそこで考えるのを一度、止めてから、音楽を消した。
明日も仕事はある。
今は…
もう私は晋作が幸せならと。
決めてから、随分長く過ぎたんだ。
部屋のベッドの中に一人で入る。
忘れる事もあって、早めに寝る事にした。
そう、私が決めた事だし、私が『願って』いる事だ。
『晋作が、いや、本当に愛した人が幸せであるなら。
私はその選択をすると決めた。』
私は忘れる事もあって、そのままベッドの中で明日の事を考えた。
明日は面倒になりそうだなぁ。
よりにもよって、他社との大きな仕事のプレゼンか?
私はどうせ事務仕事としての書類は纏めてあるし。
何も変わらないな。
少し安心してから寝た…
**************************
翌日、いつものように仕事へと家から出る。
またいつものように出勤する。
会社に入って、また笑顔で挨拶をする。
「おはようございます!」
既に居た職場の人も挨拶をしてくる。
そんな中、昼ご飯も終わって少ししてからだった。
「あ、そろそろ時間だから。
立木さん、準備をお願い出来る?
今日の資料、全部もう出来てるだろ?」
私は上司に声をかけられて、笑って言った。
「はい、資料ですね。
大丈夫ですよ!
でも今日は、随分大きな企画みたいですが…」
上司も少し判ってるような、少し困った顔でだった。
「あぁ、本当はね。
人員の中には立木さんは入ってなかった。
けど、欠員が出たのは知ってるだろ?
あの企画でのプレゼンは、俺ともう一人で出来るんだけど。
資料もそうなんだけど。
各社に配ったりと、雑務になってしまうけど…
夜の方には出なくて良いから。」
私はすぐ判った。
なるほど。
つまり、企画会議に出て『雑務』のみ。
それにその後の各社合同の飲み会には、私は不参加で良いって事か。
「判りました。
私はお酒は飲めないので、不参加ですが。
仕事の詳しい話は二人でも充分ですね!!」
そう笑って言うと、上司も少し笑う。
でも少し考える様子をしてからだった。
「なぁ、立木さん。
その、確かにな?
お酒は飲めないって事もあってだが…
他の部署からの『飲み会』は殆ど出てないけど。
俺はもう違うけどな?
結構、その…
他の部署からも色々、声がかけられてるだろ?
確かに恋人も居ない立木さんなら…
その、皆が、声をかけるだろうからな。
上手く断ってるが…
実は、『居る』のか?
俺も実はなぁ。
他の部署の連中をどうにかするのも、そろそろ…」
「あはは。
私には確かに恋人は居ませんけどねぇ。
金井さんはもう『お子さん』も居るし、仕事も大変でしょうが。
他の部署の男性とは…
考えてないんです。
ごめんなさい。」
私が笑って誤魔化すと、金井さんも苦笑いしながらもまた言ってくる。
「もしかして…
他の会社に気になる人が居るって事!?
それを先に言ってくれれば、俺だってそう…」
「う~ん。
他の会社にって訳でもないかなぁ?
金井さん?
いくら上司でも、プライベートぐらい『秘密』ですよ?
誰にだってありますから。
奥さんに言いますよ?」
金井さんは慌てて私にすぐに言ったのを見た。
「ちょ!!
俺は違うし!!
それはやめてくれ!?
それにこれは『セクハラ』でもないだろ!?
夫婦円満に荒波を立てないでくれ!!」
「あははは!!
冗談ですよ、そんな事はしませんから。
慌ててるのは面白いですけど。」
私は笑って誤魔化す。
金井さんは若干、溜息をしたが、でも笑って言う。
「なら良いがなぁ。
立木さんは頭が良いから、時々、冗談に聞こえないぞ。
勘弁してくれ。
まぁ、準備も済んでるみたいだし、そろそろ行こう。」
「はい、判りました。」
そう言ってから、金井さんは自分のデスクの方へと戻って行くのを見た。
悪い人でもないんだけどなぁ。
年齢も近い方だし…
きっと晋作も、あんな風に家庭も持って、幸せだろう。
だったら、それで良い。
私はまた心の中で少しだけ笑った。
そうして、準備をしてだった。
今日はそう、何十もの会社が一気に集まる『企画案件』をだと。
しかも『合同』でのプレゼン…
だったら、必ず『大きい企画』だからこそ。
争いになる予測は、簡単に私は出来た。
でも私は『事務』以外、出来ないと。
この会社ではそうだ。
また私は心の中で少しだけ笑う。
この企画は確かに大きい『案件』だけど。
こんなプレゼン内容だと…
勝てないですよ、金井さん?
それは思っても言わない。
私からしたら、企画がどうの、会社がどうの、そんな事も関係ない。
『雑務』として、簡単に済ませれば良い。
でも…
まぁ、流石にいくら多い会社が来ても、会う事もないだろう。
だったら、問題はない。
そうして予定時刻に合わせて。
三人で新宿の大きな会社の『合同会議室』へと向かったのだった。
**************************
始まった大きな会議室で、私は資料を配ったり。
簡単に『雑務』の方にと立ちまわる。
『合同』になれば、その分、また時間もかかる。
だからこそだが…
今夜はいつもより遅くなるなぁ。
そんな事を考えながらも、給湯室でお茶を考えたが…
他の会社の『人数』を考える。
側にあるコンビニへ行って、配る為の飲み物を買い、領収書も貰う。
そうして配り終え、また一応、合同企画の会議も終わった。
定時よりも明らかに過ぎて、もう夜の20時だ。
まぁ、でも明日は仕事は休みだし…
たまには仕方がないかとも思いながら。
私は金井さんに笑いながら言った。
「もう会議は終わって、後は飲み会ですね?
私はもう大丈夫ですか?」
「あぁ、こんな時間になってすまないな。
まだでも夜遅くでもないから、大丈夫だと思うけど。
気をつけて帰ってくれな?
俺とこいつは、またその『飲み会』での勝負だろうからなぁ。」
また溜息を出しながらも金井さんが言うので笑って私も言った。
「飲み会での『勝負』ですか?
プレゼン以外でもあるんですねぇ…」
「あぁ、今回の企画はどうしても何かしらしたいからなぁ。
そうでもしないと、他社に全部取られるから。
でも、それはまぁ…
立木さんは判らないよなぁ…
まぁでも、お疲れ様!
今日は助かったよ。
明日は会社も休みだし、ゆっくりしてくれ。」
「判りました。
頑張ってくださいね!!
では、お先に失礼します。」
私は笑って挨拶を済ませて、その場から。
会社の会議室があった大きな建物から出た。
また心の中で少しだけ笑った。
『判らないよなぁ』か、まぁ、そうだろうなぁ。
でももう、あのプレゼン内容は私も聞いた。
きっと『飲み会』でも勝てないですよ、金井さん?
そんな事を思いながら、ビルから出て、駅へと向かう時だった。
「彩香!!」
大きな声で、私の名前を呼ばれて驚いて振り向いた。
「…晋作?」
**************************
私は振り向いた時にだった。
明らかに、そう…
私は驚いて、何も言わずに考えていた。
どうして…
ここに、居る!?
新宿にはそう、確かに職場もある事は知ってるけど。
それでも…
これだけの人混みだ。
そして建物だって圧倒的に多いのに…
私をそこから見つけるのは…
出来ない筈なのに…
どうして、居る!?
それに今回の企画の…
合同会社の中には、なかった筈なのに…
どうして…
そんな中でも、若干、急ぐ様子で私の腕を掴んで晋作は言った。
「彩香!!
今まで何度も連絡しようとしていたのに。
なぜ連絡先も、それに引越しまでしてだ!!
どこにいるか、ずっと判らなかったんだぞ!!」
私は動揺する。
でも僅かに言った。
「どうして…
晋作が、ここに…
私は…」
そう、私は会う気はなかった!!
そしてそれは、『晋作の為』にする事だと。
そう決めてから一切、連絡も出来ないようにと。
番号すらも全部変えたのに。
どうして、ここに居る!?
そんな晋作は確かに年齢は取っていても同級生なのだ。
でも余り変わってない。
その容姿、中肉中背であり、髪も黒く、そしてまた…
しっかりとしたスーツを着てもいる。
だったら仕事でだろう!?
仕事中だった筈の晋作が、どうしてここに…
それでも私を離さずに、晋作は私の目を見て言う。
「彩香。
ここは人が多い。
話す事があるんだ。
だから来てくれ、すぐ側には俺の関連会社も多い。
とにかく、場所を変える。」
「な、何を…
私は…」
晋作は強引にも手を握ると、そのまま移動しようとする。
それに気付いて、私はどうにか止まって言った。
「ま、待って、晋作?
私は…」
それでも離そうしない手。
それは、私がずっと…
「晋作!!
私は話す事なんてない!!
手を離して!!」
大きく私はどうにか言ったが、晋作の顔は見れなかった。
どうして…
私は、ずっと避けてきたし、ただ晋作がと。
願ってただけなのに!!
それなのに、どうしてまた!!
「彩香に…
話がなくてもだ。
俺から話がある。
それに今、手を離したら…
彩香の事だ。
また俺から『離れる』だろ?
だったら、俺はもう離す気もない。
でもこの場所だと人が多いからだ。
もう周りに人が集まってる。
だから、まずは移動する。」
私はそれで周りを見渡す。
確かに人混みの中でも私達は目立っていた。
それにまた動揺する。
「あ…
でも…」
私はどうすれば良いか判らなくなる。
確かに場所は変えた方が良い。
けど私に、何も言える事は…
晋作は察するように、私の握っていた手を。
更に私を引き寄せてから、抱き寄せるようにしてからだった。
私はそれでも、動揺して何も言えない。
「今は場所を変えるだけだ。
こんな多い人前で話す事でもないから。」
「し、晋作?
だけど、どこに…」
その時、すぐだった。
晋作が僅かに考える様子を見せてからだった。
携帯を取り出して、いきなりだった。
晋作が電話をした相手は判らないが…
「あぁ、俺だ。
今日の仕事は、そのままメールで転送してくれるか?
俺は今日、急用が入った。
今なら急ぎの案件もないだろ。
だったら、いつもと同じだ。
メールの添付で送ってくれ。
あぁ、それで良い。
後は任せるから。」
そう言ってからすぐに電話を切って、私の方を向いてまた言った。
「もう、彩香なら判るな?
俺の方も仕事ぐらい、どうにでも出来る。
やっと彩香を見つけたんだ。
俺は離す気もない。
また『俺の為』にと、隠れるだろ?
俺の方からする『答え』も決まってる。
だから、移動する。」
私は慌てる。
でも、この身体は…
それに力もだ、晋作が離す気がない事も判る。
どうにか首を横に振る。
周りの人が多いのも事実だ。
揉め事になると…
晋作の方は何も言わずに私をそのまま連れてだった。
近くの停まっていたタクシーの方に行く。
そして中に私も一緒に入ると晋作が運転手に言った。
「京王プラザホテルへ行ってくれ。」
「はい。京王プラザホテルですね?」
「あぁ、そうだ。」
私は慌てた。
既にもうタクシーの中だ。
だから言った。
「待て、まだ話しをするとも…」
「駄目だ。
俺からの話が先だ。
彩香。
今、考えていることぐらい。
俺にも簡単に判るからな?」
私はそう、知ってるからこそだった。
でも、それは…
そうして時間もかからず、タクシーで京王プラザホテルに着いた。
支払いすらもキャッシュレスで簡単に済ませた晋作は、すぐに受付の方へと向かう。
そしてまた晋作は言った。
「今、空いてる部屋で一番のだ。
すぐに用意してくれ。」
「かしこまりました。」
私は見ていたのもある。
ホテルの従業員は、晋作を知ってるのだろう。
すぐに対応して鍵だけを晋作に渡した。
私は抱き寄せられたまま、一緒に部屋へと連れていかれるが…
でも、確かにこんな場所で騒げば…
でも、それは…
晋作から話を?
でも、私には…
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