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ホテルの外に出ると涼しい風が吹いていて、少し気分が良くなる。
身体だけの関係はむなしくなるだけだって分かっているのに、辞められないのにはちゃんと訳がある。
私がこんな容姿に生まれなければ……何か違っていたのかもしれないけれど。
「もしかしたら、誰かと愛し合い抱き合ったり……なんてね。」
そんなのあり得ない。こんな私の素顔を知って愛してくれる人なんているわけがないもの。
一生懸命メイクで誤魔化して、素顔を見せられないから男の前でお風呂に入る事も出来ないのよ。
いつだったかしら?『女の子は皆お姫様になるために生まれてきたのよ?』なんて、母が絵本を読みながら話してくれたっけ?
でも、そんなのは絵本の中だけの物語なの。
お姫様に慣れるのは綺麗な子だけ……私はその他大勢にしかなる事なんて出来ないのよ。
アパートのドアを開けて、まっすぐバスルームへ。丁寧に化粧を落とすと、鏡に映ったのは見慣れた自分の顔。
「ふふ、本当に不細工ね……」
『みぃはブスブス、ドブス女~!』
子供の頃の忘れられない記憶。大好きだった年の離れたお兄ちゃん……それから会う事も無かったけれど。
それでも彼の言葉は今も私を縛っているなんてね、笑ってしまうわ。
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