私の大切な人たち。

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私の大切な人たち。

 少しくらい辛い夜があっても、ちゃんと朝はやってくる。  最近の日課になっているフルーツといくつかの野菜を入れたスムージーを朝食代わりにして、鏡の前で問題ないか念入りにチェック。 「よし、大丈夫ね。」  今日のコーディネイトに合うバックを持ったら、完璧。お気に入りのパンプスを履いてから、玄関を開ける。  私のアパートから会社まではそう遠くないはないから、毎日徒歩で通勤している。 「宮永(みやなが)さん、おはよう。」 「おはようございます、灘川(なだがわ)先輩。」  灘川先輩はもさっとした長い髪に分厚い眼鏡、性格も大人しくて話すことは必要最低限。私達はそんな彼女を隠れて地味子と呼んでいたりする。  まあ、スラッとして背が高いしスタイルもよさそうだけど……この見た目じゃあね。 「今日はコレと……この部分のやり直し、お願いできるわね?」 「はぁい。」  適当な返事をしてさっさと自分のデスクへ戻る。渡された書類を半分ほど終わったところで、地味子がある男性社員を見ている事に気が付いた。  まさか地味子があの男性に気があったり、とか……?まあ、恋愛感情は誰にだってあるしね。  そう思って私はそれ以上は地味子の事はそれ以上、気にしない事にしたのだけれど…… 「……なによ、あれ。」  次の日私の席まで書類を届けに来たのは、もう地味子とは呼べない美しくなった灘川先輩だった。  ……この人は本当は白鳥だったんだわ、私は努力しても醜いアヒルなのに!  凄く悔しかった。だから、私の中で悪戯心が起こってしまったのを止める事が出来なかった。 「美晴(みはる)ってば灘川先輩に仕事押し付けすぎじゃない?」 「だってムカつくじゃない?地味子が分厚い眼鏡を外したら美人なんて……私は努力してるのに、何の苦労もなく綺麗になるとか狡いでしょ?」 「もう、アンタはそんな事ばっかり言って――――」  そんな風に同僚と笑っていたけれど、私の心の中は嫉妬でドロドロした感情が渦巻いていた。
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