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「甘いものが飲みたいのか?うちにはジュースのストックは無いし……今から近くのコンビニに行ってくるから少し待っていられるか?」
「ええ、待てるわ。もう少しここで休ませてもらいたいし。」
そう返せば早川さんは嬉しそうな顔をして私の頭を撫でてくる。貴方は私がこの場所にいることをそんなに喜んでくれるの?
「すぐに帰ってくるから、いい子で待ってろよ?」
財布と鍵を持ってドアから出ていく早川さんの背中を、何とも言えない気持ちでジッと見つめていた。
……早川さんは頭いいんだから、私なんかに簡単に騙されたりしないでよ。
「本当に変な男。」
そう言って私は寝室のドアを開けて、急いで自分の服を集めて着替える。
早川さんが向かった先はきっと来る時に見かけたコンビニだろう。彼の足ならすぐだろうから、急がねば。
私は化粧もろくにせずに荷物を持って靴を履き玄関を出た。施錠することは出来ないが、ほんの数分だから何とかなるでしょう。
私は複雑な思いを抱えたまま、急いでそのマンションを後にした。
自分の部屋の冷蔵庫からレモンティーのペットボトルを取り出し、お気に入りのソファーに座ると少しホッとする。
免許証を見た早川さんは私の住所を知っているだろうけれど、自分の元から逃げた女を追ってきたりはしないだろう。きっと……もう連絡もしてこないはず。
そう理解しているのに、どうしてなのかしら。私はその夜なかなか眠りにつくことが出来なかった。
もちろん……早川さんが私を追って、この部屋までくることは無かったのだけれど。
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