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それから一週間、私は早川さんの電話もメッセージも返事をしなかった。仕事場が同じビルでも会社が違うためか、気を付ければ顔を合わせることも無かった。
このままじゃ何の解決にもならないって分かってるのに、次に会った時早川さんにどんな顔をされるのかが怖くて。
私から電話であんな冷たい態度を取ったのよ、そんなのもう呆れられても仕方ないって……自分でもそう思っている。
それなのに、どこかで「どうして会いに来ようとしてくれないの?」なんて思っている我が儘な自分がいる。
彼に優しく甘やかされたせいで、もしかして早川さんの特別なんじゃないか……なんてそんな図々しい事を考えてしまうようになってしまったの。
「そんな訳ないわよね。私みたいな女の子じゃ……」
金曜日、仕事が終わって帰る支度を始める。すると何度か一緒に飲みに行ったことのある男性社員が近寄って来る。
「宮永さん、今日一緒に飲みに行かない?お酒と料理が美味しいお店見つけたんだ。」
いつもだったら喜んで一緒に行ったはずなのに、今日はそんな気分にはなれなかった。
一人でいるのは寂しいと感じるのに、今傍にいて欲しいと思うのはこの人じゃない。
「いえ、私は今日は……」
今日は断ろう……そう思って口を開くと、私と男性社員の間に誰かが割って入ってきた。
「彼女、今日は俺と約束がありますから。」
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