持ちかけた、取引。

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持ちかけた、取引。

「それで……大切な話って何です?」  会社近くの喫茶店、私は灘川先輩に言い寄る厄介な男を呼び出していた。まだ仕事の途中なのか、男は首にネームプレートを付けたまま。  よく見ると【課長 早川 卓】と書いてあるようだわ。 「早川さんですよね。単刀直入に言わせてもらいますが、うちの会社の灘川先輩に言い寄るのを金輪際止めていただけませんか?」 「それはまた、どうしてです?」  飄々とした態度が何だか気に入らないわね、敬語は使っているけれどどこか私を馬鹿にしたような喋り方だわ。イライラで感情的にならないように、頼んでおいたアイスコーヒーを一口。 「灘川先輩には好きな男性がいるんです。きっとその人が彼女を幸せにしてくれるはずだから、貴方なんかに邪魔して欲しくないんですよ。」 「貴方なんかって……宮永さんも結構いう人なんですね。でも、誰だって恋愛って自由にしていいものなんじゃないですか?」  やっぱり、引っ込んでて下さいってお願いしているのに、そんな気はないって言いたいみたいね。  本当はこんな手は使いたくなかったんだけど…… 「じゃあ、取引しませんか?早川さんが灘川先輩にこれから言い寄らないと約束してくれるなら――――」
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