どう想われてます?

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 走って追ってきた早川さんにグイっと彼の方へ身体を向かされる。今の顔は早川さんにだけは見せたくなかったのに…… 「みぃ、どうしたんだ?そんな泣きそうな顔をして。」  早川さんの所為じゃないのよ、貴方の言動はいつも私の心をおかしくさせる。今だってほら、泣きたくなんてないはずなのに瞼が熱い。  追いかけてきてくれて嬉しいなんて思いたくないのに、勝手に心がキュウっとなるの。 「狡いよ、早川さんは……」 「なにが?」  不思議に思ったのか、早川さんは私の頬に手を添えて顔を覗き込む。この優しすぎる手も、今の私の判断を余計に狂わせるのよ。 「狡いよ……昔と全然違うんだもん。」  昔みたいに意地悪で、酷い言葉で私を傷付けるばかりの貴方でいてくれれば良かったのに。そうすれば私だってこんなに迷うことも無かった。 「みぃ、黙って。」  そっと顔を持ち上げられて、優しく重ねられた唇。最初にダメだって言ったのに、早川さんはちっとも守ってくれなくて……  彼の唇がゆっくりと離れてから、抱きしめられて耳元で囁かれる。 「みぃ、今夜は俺の部屋に……来い。」  こんな早川さんの甘えたような命令に、「嫌だ」とハッキリ言えなくなってしまうのは何故なんだろう?  私はそのままタクシーに乗せられて、早川さんのマンションへと連れていかれた。
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