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「意外と大胆な提案をしてくるんだね、宮永さんは。よく知りもしない男に簡単にこんな話を持ち掛けるもんじゃないと思うな?」
初めて入ったホテルの一室で、スーツの上着を脱ぎながらさして驚いてもいなさそうな様子で彼は言った。
女性とのそんな付き合いに慣れているのだろうか、慣れた様子で上着を掛ける様子に少しだけイライラする。
「ご心配なく。普段はちゃあんと相手を選んでますから。それに……私の話に乗ってしっかりホテルについて来ちゃう男が何を言っても説得力はないと思いますし?」
私もカーティガンを脱いで、髪を束ねていたゴムを外す。
「お先にシャワーどうぞ?」
「オフィスのシャワー室で済ませて来たんで、早川さんどうぞ。」
誰かと抱き合う事が分かっている時、私は必ず先にシャワーを済ませておくようにしている。たとえ一糸まとわぬ姿になって誰かと抱き合っていても、自分の素顔を晒す事だけは出来ないから。
「サービスで一緒にシャワー、なんていうのは無し?」
「無しですね。これは対等な取引で、私が過剰なサービスをする必要なんてありませんから。」
「ざーんねん」と言いながら、早川さんは一人で浴室へと入っていった。
灘川先輩と話している時はもう少し落ち着いた雰囲気の男性かと思ってたのに。
今の早川さんは、どこか子供みたいな態度をとるから……
「あまり、変わってないのかもね……」
思わず呟いてしまった。
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