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「みぃは座ってていいのに。無茶させたから身体しんどいだろ?」
冷蔵庫の中から材料を取り出しキッチンに並べながら、早川さんはそう言うけれど……
「ちゃんと見張ってないと、得体のしれない物を食べさせられるかもしれないじゃない?」
もちろんこれは言い訳、本当は早川さんの料理をする姿が見たかっただけなんだけど……どうして私はもっと可愛らしく素直な言い方の出来る女の子になれないのかな?
シンプルなシャツとスラックスにサロンエプロンを付けた早川さんは、何だかカッコ良くて悔しいけれど見惚れてしまう。
「そう言えばスーツ姿も悪くなかったわね……」
つい本音がポロリ、慌てて自分の口を塞ぐ。こんなこと聞かれたら早川さんが調子に乗っちゃうじゃない。
これ以上、早川さんのペースで進められたらたまったもんじゃないわ。
「スーツがどうかしたのか?」
私が「何でもない」と返事をすると、早川さんは「そうか」とだけ言って調理を始めた。
早川さんは想像していたよりもずっと包丁の扱いに慣れていて、手際も良かった。スパゲティの麺をゆでてベーコンなどの具材を切っていく。
「もしかしてカルボナーラ……?」
「ああ、昔何度も作ってやったよな。みぃ、好きだったろ?」
隣に住んでいたのは10年以上前のことなのに、意地悪だったお隣のお兄ちゃんは今でも私の好物を覚えていてくれる。
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