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バスルームから聞こえてくるシャワーの音を聞きながら、ベッドに腰掛けて早川さんを待つ。
『じゃあ、取引しませんか?早川さんが灘川先輩にこれから言い寄らないと約束してくれるなら、私が代わりに貴方の相手をしてあげますから――――』
これだけ言えば早川さんも引いてくれるかもしれないって少し甘く見ていたの。この男はそんな簡単に丸め込める人じゃないって分かっていたはずなのに。
「へえ、それは結構楽しそうだな……」
なんて笑って返されてしまったら、私も覚悟を決めるしかないじゃない。
カチャリ、とバスルームの扉が開く音がして今までになく心臓がバクバクと音を立てる。
大丈夫。こっちのペースに持ち込んで、いつもの通りに抱き合えばいいだけよ。
「……酒でも飲む?」
バスルームから出て来た早川さんは、まだ濡れた髪をタオルでガシガシと拭いている。そのまま冷蔵庫からビールを取り出して私の横に座る。
「いらない。それよりきちんと髪を乾かしたら?」
「面倒くさい。アンタがやってよ。」
これが素なのか、先輩の時と全然態度が違うじゃない!本当はこの人の髪なんてどうだっていいのに、私はタオルを手に取って早川さんの髪を拭き始める。
「宮永さんって……性格が良いんだか、悪いんだか。」
笑わないでよ、私だって自分の行動の意味が分かんないんだから!ムカついてタオルを早川さんに投げつけてやったわ。
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