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白の章
実りの季節が終わり冬の始まりにさしかかった頃、日継は西都のとある商家で力仕事をしていた。
彼が西都を一時の滞在先として選んだのにはいくつか理由がある。
ひとつは野宿がきつい季節になったことだ。
家から持ち出せたのは、自分たちの身体と弓矢、五色の勾玉、そして華月がいつも身につけていた、彼女の親の形見だという小さな錆びた鏡のみ。
しばらくは野宿で乗り切ってきたが、いい加減華月を雨風にさらされない場所で寝かせてやりたかった。
また、人が多い場所の方が紛れやすく職も見つけやすいと予想したからだ。
西都は文字通り天都国西部に位置し、唯一海に面した都である。
海産物を中心とした商いで栄えているため、往来する人間も当然多い。
現に日継は荷運び兼用心棒として、華月は厨房の下働きとして臨時の仕事にありつくことが出来た。
雑魚寝とはいえ使用人区画で寝食が保証されているのだから、上出来だろう。
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