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間違いない。華月が勾玉を輝かせたあの時に聴こえた音だ。
篝火が照らしきれていない闇の中、かすかに蠢く気配。
四、五人ほどだろうか。おそらく近頃西都を騒がせているという、商家を狙う賊であろう。
大きな騒ぎになる前に収拾がつけば良いのだが。
日継は小さく息を吐き、闇に向かって呼びかけた。
「そこの、今なら何事もなかったことに出来る。どうか帰ってくれないか」
巧妙に闇に紛れているにも関わらず、自分に見とがめられたことで少なからず動揺したのだろう。
気配が揺らぐ。
次の瞬間。
「そう言われておとなしく引き下がるかボケェ!」
賊の一人が日継に襲いかかってきた。
右手に短剣が握られているのを視界にとらえた日継は、矛を構える。
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