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短剣と矛の切っ先が交わった途端、突如キィーンと鋭い音が耳元で響き、懐の中の勾玉が輝いた。
爆発的な勢いで放たれた白色の光は、辺り一面を照らし出す。
あまりの眩さに、日継も賊も反射的に目を瞑った。
「皆の者集まれ!賊が出たぞ!」
呼子笛を鳴らすまでもなく、賊が侵入したことが屋敷内に知れ渡っていた。
日継と戦おうとしていた賊は舌打ちし、仲間に指示を出す。
「取っ捕まる前にずらかるぞ!」
その言葉通りすぐさま踵をかえし、一目散に闇の中へと消えていった。
本来なら追いかけて捕らえるべき立場なのだが、目が眩んでいるせいで上手く動けない。
日継は目頭を押さえながら、先ほどの現象を反芻した。
耳元で響いた鋭い音。
華月が輝かせた時とは比較にならないほど強い光。
もしもあれが“勾玉が導く”ということだとしたら、あの賊が“天に抗う者”なのだろうか。
たった今、自分がむやみに目立つ行為をしでかしてしまったことを、この時の日継はまだ認識できていなかった。
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