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数日後、日継は華月と共に西都を離れようとしていた。
何故かと言えばひとえに目立ちすぎたからだ。
賊は取り逃がしてしまったが、何一つ盗まれずに退散させたことで、商家の主人に大変感謝された。
それだけならまだ良かったが、給金を弾むから用心棒としてずっと働かないか、と引き留められ日継は大変困ってしまったのだ。
追われている可能性がある自分たちの立場を考えれば、ひとところに長居するのは望ましくない。
結果、親類を訪ねるのでどうしても旅立たねばならない、約束してくれた給金だけ貰えればいいので仕事を辞めさせてもらいたい、と適当に言い繕う羽目になり、当初の計画は崩れてしまった。
日継の発言に何と欲のない、と感動した主人が、給金に加えてこちらが申し訳なく思う程の謝礼金をくれたおかげで、十分な旅支度は出来たが、今夜からまた野宿だ。
「華月、寒くないか?」
焚き火をおこした日継がそう尋ねると、平気だと言うかのようにこくんと頷いた。
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