白の章

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「そうか、良かった」 そう言って微笑み返した時、日継の耳は例のチリチリという音をとらえた。 「誰だ!?」 とっさに華月をかばい、手にいれたばかりの短剣を構えた日継の前に、銀髪の青年が姿を現す。 「先日は世話になったな」 見覚えのない顔だったので、日継は素直に尋ねる。 「……どちら様で?」 「人を負かしといて忘れんなボケェ!」 その口調で、先日の賊だと判った。 見覚えがないのは、覆面で顔がよく見えていなかったからだ。 「俺は仕事をこなしただけだが……そもそも盗みに勝ち負けがあるのか?」 仁王立ちした青年は、ずびしと日継を指さした。 「盗賊が盗み損ねる事自体が負けだろうが!あの日の借りを返しにわざわざ後つけさせてもらったんだ。俺と拳で勝負しろい!」
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