31人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうか、良かった」
そう言って微笑み返した時、日継の耳は例のチリチリという音をとらえた。
「誰だ!?」
とっさに華月をかばい、手にいれたばかりの短剣を構えた日継の前に、銀髪の青年が姿を現す。
「先日は世話になったな」
見覚えのない顔だったので、日継は素直に尋ねる。
「……どちら様で?」
「人を負かしといて忘れんなボケェ!」
その口調で、先日の賊だと判った。
見覚えがないのは、覆面で顔がよく見えていなかったからだ。
「俺は仕事をこなしただけだが……そもそも盗みに勝ち負けがあるのか?」
仁王立ちした青年は、ずびしと日継を指さした。
「盗賊が盗み損ねる事自体が負けだろうが!あの日の借りを返しにわざわざ後つけさせてもらったんだ。俺と拳で勝負しろい!」
最初のコメントを投稿しよう!