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見上げた盗賊魂というか何というか。
はた迷惑な事この上ないが、一方でまたあの現象が起きるのか、確かめる好機でもある。
日継は短剣を鞘に納め、足元に置く。
外套を脱ぎ捨てながら立ち上がり、華月を巻き込まぬよう距離を取った位置で構えた。
銀髪の青年は、ほんの一瞬満足気に笑ったが、すぐに表情を引き締め構えの姿勢を取る。
すっかり暗くなった空の下、二人を見つめるのは欠けた月と華月のみ。
パチリ、と焚き火がはぜる。
同時に銀髪の青年の足が地を蹴り、日継に一撃を入れようと間合いを詰めてきた。
迎えうつ日継はまず喉元に向かって突きだされた拳を捌く算段で、一歩踏み込む。
二人の拳が正面からぶつかり合った途端、あの夜よりも鋭さを増した音が頭の中に響きわたる。
そして、再び勾玉が眩い白の光を放った。
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