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西都の外れ、川の源流に位置する洞窟の中に彼らの棲み処はあった。
洞窟の入り口に垂れ下がる無数の蔦をかき分け、青年は奥に向かって迷いなく歩いて行く。
洞窟内の通路は複雑な造りになっており、華月を抱えた日継は青年の背を追うことでどうにか迷わずに済んでいる状況だった。
これなら容易に見つからないはずだ、と妙に感心してしまう。
やがて、広い空間に到着するやいなや、暖かい明かりが灯る場所から幼い子供達が飛び出してきた。
「銀兄ちゃん、おかえり!」
「お前ら、まだ寝てなかったのか?」
「だって、銀兄ちゃんにおやすみ言えないんだもん」
「いっちょまえな事言いやがって」
ぶっきらぼうな物言いながらも、青年の表情は優しい。
盗賊という言葉からは随分かけ離れたやり取りに戸惑う日継を、子供達は好奇の目で見ている。
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