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「別に気にしちゃいねえよ。……俺らみんな、盗賊なんて言われちゃいるが元は身寄りのない浮浪児。だから決して分不相応な盗みはしねえ。生きていくのに必要な分だけ、あるとこからいただいてるだけさ」
確かに盗みは悪かも知れないが、彼らにとっては生きていくための手段だ。
食料か金子や商いの品かの違いだけで、彼らの生き方は日継のそれと似ている。
自分は、この短時間に親近感を抱きはじめている。そう日継は思った。
寝床として案内されたのは、自然の岩壁で仕切られた空間だった。
木製の寝台が置かれているだけの簡素なものだが、岩壁のすき間から月明かりも射し込んでいて、一晩を過ごすには十分な環境に思える。
華月を寝かせて初めて、自分の腕がぱんぱんに張っている事に気づく。
華月が安らかな寝息を立てていることを確認して、日継はその場を離れた。
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