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その夜は、不吉なほどに美しい満月が空に浮かんでいた。
一度床についたが、チリチリと何かが鳴るような音が聴こえ寝入りそびれた日継は身体を起こす。
見れば、どこか遠くを見つめている華月がおぼつかない足取りで歩き出そうとしているところだった。
「父上、起きて下さい」
慌てた日継は、父の身体を揺する。
「……どうした?」
くぐもった声でそう返してのろのろと起きた父も、常ならぬ華月の姿を見るやいなや表情を変えた。
二人に全く気づく様子もなく、華月は立ち止まり両手を前に差し出す。
すると、手のひらの上に何かが現れた。
きらめく星のような白。
柔らかな炎のような紅。
命宿る緑の葉のような碧。
静かな夜の闇のような黒。
そして、降り注ぐ日射しのような黄。
ほのかな光に照らされた華月は、十七の少女と言うより、まるで神を降ろした巫女のようだ。
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