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「嫌だ!父上を置いてはいけません!」
炎はまたたくまに燃え広がっていく。
「ここに残るのは、私が果たすべき使命なんだ!」
厳しく自分を諭した後、父は微笑んだ。
何かに殉じる覚悟を決めているのだと悟った日継は、急いで狩りに使っていた弓矢を背負う。
そして、華月と勾玉を抱え家の裏手から夜の森に向かって駆け出した。
月の光が行く先を照らし出す。
振り向かずただ前だけを見据えて、日継はひたすらに走った。
涙で視界がぼやけそうになるのを必死にこらえながら。
「兄さま……」
華月のか細い声に、日継は足を止めた。
夜の森に逃げ込んだおかげか、追手が迫ってくる様子はない。
華月の状態確認を優先していいだろうと彼は判断した。
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