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「華月、身体は大丈夫か?」
「うん……私、何でここに……?」
「覚えていないのか?」
五色の勾玉を見てもピンと来ないようで、華月は首をかしげている。
勾玉を輝かせる奇跡を起こしたというのに、どうやら記憶にないらしい。
「兄さま、あれは……家がある方向よね?」
華月の目に、激しく燃え上がる炎が映るのを見て、日継は自らのうかつさを悔やんだ。
「どうして父さまはいないの?まさか……」
何も答えられずにいる彼の表情を見て、全てを悟ったらしい。
日継には大粒の涙をぽろぽろこぼす華月の身体を抱き締めることしか出来なかった。
「いやああぁぁぁっ!!父さまぁぁっ!!」
“来るべき日に向けて天に抗う者達を探せ”
何故自分にそう命じたのか、聞きたくても父はもういない。
日常も帰るべき家も父も失い、華月と共にあてのない旅に出るしかないのだ。
泣きじゃくる華月を抱き締めながら、日継はきつく唇をかんだ。
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