第3章

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         〇  結局、いのりちゃんと仲直りができないまま、終業式の日がやってきた。  長かった梅雨は明け、明日から夏休みがやってくる。  手渡された通知表は、五段階評価でやたらと『3』と『4』とが多かった。  その中途半端な数字を見ていると、まるで今の自分のあやふやな立ち位置が成績にも反映されているような気がしてならない。  結局、いのりちゃんとは距離を置いたまま。  まもりさんとの交流も中途半端に続いている。  このまま夏休みに入ったら、私はどんな風に毎日を過ごせばいいのだろう?  まもりさんに記憶のことを黙ったまま、何も知らないフリをしてあの店を訪れてもいいのだろうか。  ――僕の会いたいと思っているその人は、正真正銘の『本当の魔法使い』だったんだよ。  まもりさんが言っていた。  彼があの店で待っているのは、本当の魔法使いだと。  それが事実なら、彼が待っている相手は私ではないということになる。  前に流星さんが口にした予想は、見事に外れてしまったということだ。  なら、まもりさんが待っているのはやはり、いのりちゃんなのだろうか。  彼女が魔法使いだという話は聞いたことがないけれど、それは私が忘れているだけなのかもしれない。  彼女をあの店に連れていけば、まもりさんの心は救われるのだろうか?  でも……。  
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