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といっても、実際のところはわからない。
記憶の断片が残っているのはただの偶然で、そこに深い意味はないのかもしれない。
でも。
このままずっと思い出せないでいると、きっと二人は永遠に苦しみ続けることになる。
(なら、いま私にできることは……)
いま、私にできること。
二人の苦しみを、少しでもやわらげること。
このまま何もしなければ、現状はきっと変わらない。
曖昧な記憶に心を揺さぶられ、不安を抱えたまま二人は生きていかなければならない。
なら、いっそ。
彼らは思い出すべきなのかもしれない。
そして私は、彼らが記憶を取り戻すための、架け橋になるべきなのかもしれない。
この先、まもりさんが何度記憶を消すことになったとしても。
私は、二人に真実を伝えるべきなのかもしれない。
たとえどれだけ彼らの心を傷つけることになっても、それが本当の意味で彼らのためになるのなら。
私は何度だって、彼らの架け橋になりたい――。
「!」
と、そのとき。
スマホのバイブが鳴った。
見ると、画面には『まもり』の文字が表示されている。
(まもりさん……?)
SNSでのメッセージだった。
彼の方から連絡してくるのは珍しい。
私は少しだけ不安になりながらも、恐る恐るメッセージを開く。
するとそこには、
「え……?」
たった一言だけ、短い挨拶が綴られていた。
『さよなら。今までありがとう』
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