第3章

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   といっても、実際のところはわからない。  記憶の断片が残っているのはただの偶然で、そこに深い意味はないのかもしれない。  でも。  このままずっと思い出せないでいると、きっと二人は永遠に苦しみ続けることになる。 (なら、いま私にできることは……)  いま、私にできること。  二人の苦しみを、少しでもやわらげること。  このまま何もしなければ、現状はきっと変わらない。  曖昧な記憶に心を揺さぶられ、不安を抱えたまま二人は生きていかなければならない。  なら、いっそ。  彼らは思い出すべきなのかもしれない。  そして私は、彼らが記憶を取り戻すための、架け橋になるべきなのかもしれない。  この先、まもりさんが何度記憶を消すことになったとしても。  私は、二人に真実を伝えるべきなのかもしれない。  たとえどれだけ彼らの心を傷つけることになっても、それが本当の意味で彼らのためになるのなら。  私は何度だって、彼らの架け橋になりたい――。 「!」  と、そのとき。  スマホのバイブが鳴った。  見ると、画面には『まもり』の文字が表示されている。 (まもりさん……?)  SNSでのメッセージだった。  彼の方から連絡してくるのは珍しい。  私は少しだけ不安になりながらも、恐る恐るメッセージを開く。  するとそこには、 「え……?」  たった一言だけ、短い挨拶が綴られていた。 『さよなら。今までありがとう』  
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